特集

「クラフトフェアまつもと」これまでと今と、これから

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クラフトフェアまつもと2013
今年は2日間とも天候に恵まれたクラフトフェアまつもと

■「盛り上がる」=いいこと?

― 今年のクラフトフェア来場者は2日間で5万1000人と聞きました。

昨年が7万人でしたから、2万人減りました。数字だけ見れば、何か悪いことのように考える人もいるようですが、僕たちはそうは思っていません。クラフトフェアは「人を集める」ためのイベントではないので。「盛り上がる」という言葉がよく使われるようになったのは90年代以降かなと思いますが、「人がたくさん集まってにぎやかなのがいい」「盛り上がらないとイベントとしてはダメ」という雰囲気は、そのころから生まれたような気がします。確かにフェアにもそういう流れがあったかもしれませんが、今は違う。今年はフェアに一極集中するのではなく、いろいろなところに人の流れが分散して、いい2日間だったと思っています。

― 当日は中町通りや縄手通り、六九商店街なども人出が多かったです。

六九商店街

月間イベント「工芸の五月」の企画も、あちこちで開催されましたからね。近年、行政や地元商店街の人たちなどが「工芸の五月」の企画に加わり広がりが出てきました。あがたの森公園から街なかを通って駅まで行く「特別回遊バス」もありましたし。回遊性についてはまだ実験的な面もありますが、フェアだけでなく街全体を楽しめるようになってきたのがここ数年の成果だと思います。

― 増え続けるフェア出展希望者の思いに応える場としてスタートした「工芸の五月」が、「民芸」というバックグラウンドと相まって、最近は街全体のイベントとして広がりつつありますね。

広がってきたことで、「工芸の五月」は「工芸の五月」、「クラフトフェア」は「クラフトフェア」というそれぞれの価値というか方向性が見えてきた。あらためて「フェアはどうあるべきだろう?」と考えられるようになりました。そこでここ2、3年は「フェアの質」を何とか担保できないだろうかと思って、取り組み始めました。

■ルールを守れない人は来なくていい

― 「フェアの質」とは?

「フェアの質」とは「参加者の質」。参加者には出展者、スタッフ、そして来場者も含まれます。フェアはその三者でつくられていますから。

― 出展者やスタッフはともかく、来場者に質を求めるのは難しいですよね?

今年のフェアの様子

もちろんたやすいことではありませんが、まだ遅くはないと思っています。もともと、フェアのお客さんは「意識が高い」という声がありました。例えば1回目からずっとゴミ捨て場は設置せず、ゴミは全て持ち帰りです。その意識は浸透していると思いますが、やはり何人かはゴミを捨てていく人もいる。そこを「人が増えたから仕方ない」とするのではなく、ちゃんと声を上げて、気付いてもらうことが大事だと思っています。「楽しいから来てください」「誰でもいいから来てください」ではありません。ルールを守れない人は来なくていい。

― 昨年は「迷惑駐車問題がフェア存続の危機になる」と強く呼び掛けていましたね。

ホームページやツイッターを通して呼び掛け、賛同してくれた人がさらに拡散してくれました。僕たちがちゃんと声を上げることで、それが広がり、多くの人が気付くきっかけになる。その効果の大きさを実感することができました。ただ、そうは言っても今年も迷惑駐車はゼロにはならないわけで。ゴミにせよ、迷惑駐車にせよ、皆が悪いと思うようなことを指摘することで、当たり前のことだけど守らなければいけないルールを再確認してもらう。そのことが質を保つことにつながるのではないかと思っています。

■「できることを持ち寄る」から「皆の問題を共有する」へ

フェアスタッフ
スタッフ同士の結婚を祝い、2日目の朝に行った「サプライズウエディング」

― フェアのスタッフを見ていると生き生きしていて、とてもいい雰囲気だと思います。

ボランティアスタッフといってもここまでくると「それぞれができることをする」だけでは成り立たない部分も出てきます。「できることを持ち寄る」から「皆で抱えている問題を共有する」というところもやっていかないと難しい。とはいえ、抱えた問題を全て解決するなんてことは無理なので、そこは「今できなくてもいつかやろう」とか「無理なものは無理!」とどこかで諦めて、くよくよしない。そうじゃないとやっていられないでしょ?

― そう割り切ってくれる人がいると心強いです(笑)。大島さんは実行委員長になって今年で4年目ですよね。

大島さん
実行委員長の大島さん

フェアに関わり始めたのは10年くらい前です。それでまあ、いろいろあって実行委員長になったわけですが、特にこうしようとか、こうしなきゃいけないという意識はありません。これだけ多くの人が関わっているものにトップダウンで言っても付き合いきれなくなるだろうし。ただ、自分は何ができるだろうと思ったときに、人の特性を見て振り分けることはできるかな、と。建築の現場で仕事をしているから、それならできる。ものづくりをしている人は、チームワークが苦手な人が多いから(笑)。
あと、なるべくいろいろな人の声を聞くようにしています。今年も五月亭(フェア初日の夕方から芝生の上で開催される野外ライブ)では多くの人と話をしました。皆が思っているフェアと、こちらが思っているフェアのギャップを埋めたいと思っています。

■30年でひと区切り

― 来年は、30周年という区切りの年になります。

ようやく種まきの時期が終わるのかなという感じです。今年は芽が出てきたと思える部分もあったので、それを育てて使いものになるようにするのが次の30年かな。1985年にフェアをスタートしたときは、作り手の人が自身の作品の発表の場を設けたいという思いが中心だったかもしれませんが、それは「こういうものを日常的に使うのっていいでしょ」という提案でもあったと僕は思っています。日常生活、暮らしの提案というのはもう、生き方の問題。いずれはフェアのような場がなくなっても、こういう暮らしができればいい。そう考えると、まだまだ先は長くて、僕たちは「今を預かっている者としてできることをやろう」という気持ちです。次に続いていくものを信じて、ね。

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大島さんは「いろいろなものを受け入れる『何でもアリ』なのが松本。そこを残したい」と話す。それがきっと松本でクラフトフェアが始まり、続いてきた理由なのかもしれない。
「インディペンデント」の存在として、29回という数字を重ねてきたクラフトフェア。あがたの森公園で数十人が参加して始まったムーブメントは、徐々に広がり、「松本」を動かしつつある。

クラフトフェアまつもと
1985年にスタートしたFieldExhibition。毎年5月の最終土曜日・日曜日の2日間、全国から270組のクラフト作家があがたの森公園に集まり、作品の展示・販売を行う。
http://matsumoto-crafts.com/cfm/

「クラフトフェアまつもと」盛況に-周辺地域や施設でもイベント、回遊性生む(松本経済新聞)

信大生が回遊性プロジェクト「すわりまわる」-クラフトフェアで街中企画多彩に(松本経済新聞)

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