安曇野市の絵本美術館&コテージ「森のおうち」(安曇野市穂高有明、TEL 0263-83-5670)で現在、「アフリカの鼓動 絵本原画展」と「長編ファンタジーの表紙絵展」が開催されている。
両展は、「アフリカの音」「エンザロ村のかまど」「クロニクル 千古の闇」「指輪物語」の4作品の原画を展示する。7月4日には、「エンザロ村のかまど」の著者で、「クロニクル」シリーズの翻訳を手掛けたさくまゆみこさんによる講演会が行われた。同講演会は、同館のテナントで松本に本店がある「ちいさいおうち書店」の開店30周年を記念したもの。
2部構成で行われた講演会。第1部では「クロニクル千古の闇 その魅力を語る」と題して、長編ファンタジー「クロニクル」シリーズについて語った。「今までは全作品を読んだうえで翻訳を始めていたが、今回は一部しか読まずに始めざるを得なかった。初めて、物語の全体が見えないまま始めたので不安だった」と話し、「あらかじめもらっていたあらすじと実際に届いたものの内容が違ったり、わからないままの謎があったり…。まるで霧の中を歩いているようだった」とさまざまなエピソードを披露した。
ある道具を意味する単語が出てきた際に、どういった物なのか分からなかったため原作者のミシェル・ペイヴァーさんに質問したところ、素材や形状などを細かく説明されたというさくまさん。「だったら最初からそう書いておいてくれていればいいのにね」と話すと会場からは笑いが起こった。「でも、ペイヴァーさんの中にそれだけ細かいビジョンがあることが分かり安心した。ただのエンタメではなく本格ファンタジーを書こうとしている人だということが分かった」と続け、作品やペイヴァーさんの魅力を存分に語った。
第2部では、「アフリカの鼓動 絵本原画展」に原画を展示する沢田としきさんの追悼イベントとして、アフリカ音楽を奏でるグループ「サブニュマ」による演奏が行われた。沢田さんの絵本「アフリカの音」の読み聞かせをする活動をしているメンバーの竹内利彦さんが、沢田さんを偲んで演奏したいと同館に申し出たことで実現した。アフリカの民族衣装に身を包んだメンバーは、「ジャンベ」と呼ばれる太鼓や弦楽器の演奏をBGMに、「アフリカの音」を朗読した。
演奏後はさくまさんが、沢田さんも参加していたアフリカに図書館を作る運動「アフリカ子どもの本プロジェクト」についてや、ケニアの人たちにかまどの作り方を伝授した岸田袈裟さんのエピソードを紹介。「それまでは7人に1人が5歳前に亡くなっていたが、かまどの熱で殺菌された水を使うようになってから、135人に1人の割合になった」と報告。「できることから一歩ずつ進めていければ」と話した。
参加した松本市の重田あまなさん(21)は「『考える』より『感じる』ことのできる講演会だった。参加して良かった」と笑顔を見せた。
営業時間は9時30分~17時(入館は16時40分まで)。観覧料は、大人=700円、小学生=500円、3歳以上=250円。会期中は木曜休館。7月13日まで。