
まつもと市民芸術館(松本市深志3)の2025年度公演のラインアップが3月21日、発表された。
当日は、就任2年目を迎える同館芸術監督団の木ノ下裕一さんと倉田翠さん、石丸幹二さんの3人が記者会見を行った。10月から大規模改修を予定していることから2025年度は「ひらいていく劇場」をコンセプトに、館外で行うアウトリーチ公演も展開していく。改修期間は、主ホール=10月~2027年3月、小ホール=2026年9月~2027年2月。
木ノ下さんは「1年目は『出会う』、2・3年目は『飛び出す』がテーマ。2027年にリニューアルオープンをする際にはあらためて『集う』ようにしていきたい」と話す。木ノ下さんが手がけるシリーズ企画「ひらく古典のトビラ」(2026年2月)では、「アクセシビリティ強化公演」として手話狂言や手話通訳付き落語、目が不自由だった女性たちが暮らしのために歌ってきた「瞽女唄(ごぜうた)」などを紹介。自ら席亭を務める「木ノ下亭」(同3月)では、柳家喬太郎さん、桂吉弥さんを迎える。
倉田さんは、長野市出身のコンテンポラリーダンサー・山田せつこさんのソロダンス公演「いま ここに います」(7月)のほか美術館の中庭を舞台にした「身体と音楽」(8月)を企画。2024年度に始めた松本少年刑務所でのワークショップは継続し、作品づくりにも取り組む。公募で選んだ4人と共に松本から世界に発信する作品制作を目指すプロジェクト「step into the world from Matsumoto」も始動させる。
石丸さんは、2024年秋にリリースしたアルバム「with FRIENDS」の楽曲を中心にしたジャズコンサート「石丸幹二&ACOUSTIC WEATHER REPORT」(4月)や、0歳から大人までが楽しめるコンサート「はじめまして!」(7月)を開催。同館改修中は、キッセイ文化ホール(水汲)のほか、病院などさまざまな場所でのコンサートを企画する。
鼎談形式で1年間を振り返った3人は、月1回程度、意見交換の場を設けたり、互いの企画を見に行ったりすることで、刺激を受けているという。地域の人たちと「顔が見える」関係を築くことに触れ、倉田さんは「こちらが待っていても入ってきてくれるとは限らないので、さらに『ひらいて』いきたい」と話した。石丸さんは就任直後の5月に、3日間かけて3人で市内の施設や楽器工房を巡ったことを回顧。木ノ下さんは「3人のやっていることが違うからこそ、方向性が広がっていく。まだまだ届いていないところもあるので、もっと届けたい」と意気込んでいた。