NPO法人「コミュニティシネマ松本CINEMAセレクト」は9月11日、映画「野火」をまつもと市民芸術館(松本市深志3)小ホールで上映する。当日は主演も務めた塚本晋也監督と出演者の森優作さんが来場する。
舞台は第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。田村一等兵(塚本さん)は結核を患い、野戦病院行きを余儀なくされる。しかし負傷兵だらけで食料も困窮していたために、早々に追い出され、再び戻った部隊からも入隊を拒否される。空腹と孤独と戦いながら原野をさまよい、極限状態に追い込まれた人々の姿が描かれる。
原作は大岡昇平の同名小説。1959年、市川崑監督により映画化されたが、「50年前のリメークではなく、あくまで原作から感じたものを映画にした」と塚本さん。高校時代に原作を読み、「本当の戦場にいるような恐ろしさがあり、頭から離れなかった」という。映画化に向けて動き始めたのは20年以上前。資金も少なく難航する中、「実際に戦争の痛みを知る人がいよいよ少なくなるにつれ、また戦争をしようとする動きが起こっているような気がしてならない。作るのは今しかない」との思いを強くし、多くの人の協力を得て完成した。
「戦後70年の夏、さまざまな催事が行われたが、戦後70年は戦後71年への通り道にすぎない」と同NPOの宮崎善文理事長。「他の戦争映画のように『高揚』するわけでも、かわいそうと『涙』する作品でもない。思想ではなく、ひたすら戦争を描いている」と話す。今年7月に公開され全国各地で上映し、若い人たちも多く足を運んでいるという。「デモや集会に参加するのも一つの表現かもしれないが、この作品を見るという行為も大切なことなのではないかと思う。少しでも多くの方に見てもらい、いろいろなことを感じてもらえれば」
上映は14時~、16時~、19時30分~。16時と19時30分の回の終了後に、塚本監督と森さんの舞台あいさつとサイン会を行う。料金は前売り=1,400円、メール予約=1,500円、当日券=1,800円(一般)、1,400円(高校・大学生)。