信州大学人文学部芸術コミュニケーション講座(松本市旭3)が2人の現代美術作家を迎え、大学内や市内の菓子店6店舗で作品展示やイベントを行う「アーケード-かたち・リズム・交差-」を開催している。
佐々木愛さん(大阪府)は、開運堂本店(中央2)で11月16日からの公開に向けて制作を進めている。同店の通りに面したガラス窓に、シュガードローイングを施す。4日間かけてグラフィックテープを用いて下書きを行い、現在はロイヤルアイシングの作業に。「これから徐々にできあがっていくので、その過程も楽しんでもらえれば」と同学部3年の竹田しほりさんは話す。
文谷有佳里さん(愛知県)は、藤むら(中央2)、梅月菓子舗(北深志1)、東もん磯村(大手4)、飯田屋飴店(大手2)、山屋御飴所(同)で、ガラスドローイングを展示。各店で浮かび上がったイメージを黒色の水性顔料ペンで描いているという。「5カ所それぞれ違う作品なので、回ってぜひ比較してほしい」(竹田さん)。
9日・10日は、文谷さんを講師に、街歩きをしながらフロッタージュをして、日常の風景を見つめ直すイベント「歩かでいられじ」が行われた。10日はあいにくの雨模様で、文谷さんの作品を展示する菓子店を巡りながら、最後に立ち寄った翁堂(中央3)の蔵内でさまざまなものを使ってフロッタージュを行った。「紙を当てる角度や、クーピーペンシルのどこを使うかで浮き上がる模様が違う」と文谷さん。フロッタージュしたメモ帳にカーボン紙を貼って、その上から引っかいたり擦ったり、何かを押し付けたりしてさらに模様を描いた。「失敗とか成功はない。皆それぞれ違うものができるのが面白い」
同企画は「街の日常を、さりげなく、しかし、確かに変貌させる芸術の魅力を感じてほしい」との思いがある。「街に出ると、昔のものと新しいものの境界がある。以前は商店街があったとか、掘り起こした場所との境目とか…そういうものに寄って見るきっかけになれば」と同学部の金井直准教授は話す。
佐々木さんの展示は11月16日~24日。22日~24日は、信州大学自然科学館で「自然科学館I~場所を知るためのドローイング~」を行う。文谷さんの展示は24日まで。22日~24日は茅野市美術館で公開制作やワークショップなどを行う。詳しい内容はホームページで確認できる。