松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)1階の子ども創作館で現在、荒川裕さん(58)と大平滋子さん(49)の2人の写真家による作品展「心象写真風景I」が開催されている。
同展は「心で捉えたそれぞれの松本市美術館」と題して、同館内を被写体にした作品を集めたもの。「最初は市内や中町通りなどで撮影しようと思っていたが、開催場所をテーマにした作品を集めたら面白いと思った」と大平さん。昨年12月から約半年間で撮影した作品を12点ずつ展示する。
共通の場所で撮影したものは比較して見られるように並べる。松本出身の前衛芸術家・草間彌生さんのオブジェ「幻の華」や、同館のロゴ、館内の階段など。荒川さんはぼかしを生かした作品が多く、大平さんは輪郭をしっかりと写したものが多い。「今回は比較できるように、ぼかして撮った」と荒川さん。「絵だと真っ白なカンバスにゼロから自由に描くことができるが、写真は被写体があるのでゼロからではない。ぼかすことで形あるものを少しでも自由に表現できる」
大平さんは水路の中に入ったり、床に這(は)いつくばったりと、体を張って撮影したものがあるという。「最初に大平さんの撮影方法を見たときは衝撃的だった。自分はそういう撮り方をしたことがないので勉強になる」と荒川さん。大平さんは「同じ被写体でもアングルの違いで全く違ったものに見える。ローアングルって面白い」とほほ笑む。
展示できなかった作品はファイリングすることにしたが、予定していた枚数を荒川さんが上回ると、大平さんはさらに多く用意するなど、刺激を受け合っているという2人。「負けてたまるかという気持ちがあって(笑)。荒川さんをうなずかせるものを撮りたいと思ってしまう」(大平さん)。互いに負けず嫌いで、きつめの冗談を投げることもあるが、「この作品は素晴らしいよね」「幻想的だけどリアルな部分があるね」など褒め合うことも。
「『もっといいものを』と何度も撮り直しても、結局1枚目を選ぶことが多かった。撮るほどに人の目線が無意識のうちに気になっていたのだと思う。写真は面白いとあらためて思えた」(荒川さん)、「心の動くままに撮影したものばかり。見終わった後に、どこを撮ったものか探してもらっても楽しいと思うので、ぜひ気軽に見に来て」(大平さん)。
開館時間は9時~17時。入場無料。6月17日まで。