
足立区立郷土博物館には、1000点を超える浮世絵版画のコレクションが収蔵されています。松方三郎旧蔵品を中核としたこのコレクションは、浮世絵の初期から歌麿・北斎・広重といった人気絵師、さらには明治期の小林清親にまで至る広範なものです。
この秀逸コレクションを4期に分けてご紹介している本展の第3期・第4期では、幕末から明治以降までの浮世絵作品をまとめてご紹介します。現代でも人気の高い歌川国芳や広重「江戸名所百景」シリーズの名品、近年注目を集める小原古邨の作品などもお楽しみいただけます。

歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」
開催概要

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1. 人気作品から希少な作品まで
足立区立郷土博物館の浮世絵コレクションの魅力の一つはその多様さです。時代も絵師の流派も様々な作品で構成されるコレクションには、歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋鋪」のような人気作品や、まだまだ知られていない絵師の希少な作品も存在します。美人画、役者絵、 風景画(名所絵)、戯画、おもちゃ絵などテーマも様々な作品の中からぜひ気になる作品を見つけて下さい。
2. 会期ごとに全作品を展示替え
第3期・第4期では、幕末から明治以降までの浮世絵の変遷をまとめてお楽しみいただけます。2期通してご覧いただくお客様は半券のご提示により、リピーター料金でご入場いただけます。(大人1,000円/大学生・高校生500円/小中学生無料)
第3期 歌川派の全盛 会期:8月2日(土)~8月31日(日)
幕末の浮世絵界で隆盛を極めた歌川派の中でも、三代歌川豊国は当時大人気の絵師で、多くの作品を残しました。「隅田乃蛍狩」は、蛍の飛び交う隅田川のほとりで納涼を楽しむ人々の様子が生き生きと描かれています。

三代歌川豊国 「隅田乃蛍狩」
現代でも人気の高い江戸時代後期の浮世絵師、歌川国芳は武者絵で人気を得ると、さらに美人画や風景画、戯画など幅広い分野に活躍しました。こちらの作品は、まさに酒呑童子を討伐しようとする場面をたくみに表現しています。

歌川国芳 「大江山酒呑童子退治の図」
第3期で最も充実した作品が見られるのが、風景画の名手・歌川広重です。「名所江戸百景」は、119図の名所絵(二世広重落款の1図を含む)と目録をあわせて全120枚からなる、歌川広重の晩年を代表する大シリーズ。その中から本展では36図をご紹介します。「亀戸梅屋舗」「深川洲崎十万坪」などの作品に見られるような近景のモチーフに極端に近づく構図は鑑賞者を驚かすような視覚効果のみならず、強調された遠近感により臨場感を画中にもたらします。「大はしあたけの夕立」では画面全体を覆う雨が角度と濃淡の異なる二種類の線で重ねられ、その雨脚の強さを表現しています。各図とも技巧が凝らされた見どころの多い人気シリーズです。

歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」

歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
第4期 明治から昭和へ 会期:9月6日(土)~10月5日(日)
国芳の門人で明治時代に活躍した月岡芳年の作品「東京自慢十二ヶ月」シリーズ。明治時代らしい鮮やかな赤や紫の色彩が散りばめられた朝顔や着物に芳年の洗練された色彩感覚が感じられます。本展では芳年人気シリーズ「月百姿」からも1点展覧いたします。

月岡芳年「東京自慢十二ヶ月 六月 入谷の朝顔」

月岡芳年「月百姿 はかなしや波の下にも入ぬへし つきの都の人や見るとて 有子」
第4期で最も多くの作品が展示される小林清親は、光と影に強く関心を寄せた明治期を代表する絵師です。もともとは幕臣だった清親の作品には、江戸から東京へと変わってゆく町並みへの深い眼差しが感じられます。朝、夕、夜、晴天、雨上がりなど、時間や天気によって変わる風景の表情を捉えた清親の木版画は、江戸時代までの名所絵とはまた異なる情趣を備えています。

小林清親「大川岸一之橋遠景」

小林清親「川口善光寺雨晴」

小林清親「本町通夜通」
詩情豊かな風景版画を多く手掛けた川瀬巴水は、版元の渡邊庄三郎と共に伝統的な浮世絵木版技術による新たな木版画「新版画」の制作で知られます。同じく新版画の制作に取り組んだ画家、小原古邨の作品「柘榴と鸚鵡」では、羽の一枚一枚に絵の具をつけずに馬連で摺ることで凹凸を施す、浮世絵以来の「空摺り」の技法によって、無色の細かな凹凸が施されています。これらの作品では新版画の優れた木版技術を垣間見ることが出来ます。

川瀬巴水「甲州梁川」

小原古邨「柘榴と鸚鵡」
※作品画像はすべて足立区立郷土博物館所蔵

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