「時の記念日」の6月10日、江戸時代に時間を知らせていた「時の鐘」が一日限りで復活する「時の鐘~大切なとき~」が松本・大北地域で行われる。
松本市時計博物館(松本市中央1)が現在開催している「わがやのお宝時計展III」の特別企画。松本・大北地域合わせて22の寺院が参加し、夜明けの時刻(3時52分)と日暮れの時刻(19時43分)にそれぞれの寺院の鐘を突く。
日本では室町時代ごろから1873(明治6)年に太陽暦が導入されるまで、時間は夜明けと日暮れの間をそれぞれ6等分する不定時法が用いられていた。江戸時代、庶民は鐘の音で時刻を知ったという。夜明けは「明け六つ」、日暮れは「暮れ六つ」と呼ばれ、捨て鐘を3回突いた後、6回続けて突き、時を告げていた。「捨て鐘3つというのは『これから時刻を知らせますよ』という意味。現在も時報の『プッ、プッ、プッ、ポーン』として残っている」と同館の遠山順次館長。当日も同様に、捨て鐘として3回、その後6回突く。
鐘を突くのは各寺院の住職だが、松本の「広沢寺」(里山辺林)では市民も参加して「鐘撞式」を行う。近くの小中学生や、震災で避難してきた家族などが一つずつ鐘を突く予定。「朝はちょっと早い時間だが、ぜひ耳を済ませて聞いてほしい。鐘を突く人が込めた気持ちにも思いをはせてもらえれば」と遠山館長。
同館としては初めての取り組みで、「県内、国内で見ても恐らく初の試み」という。昨年度、地域の寺院に鐘についてのアンケート調査を行い、現在鐘を日常的に突いている寺院が半分以下となっていることを知った。「時間の大切さを再認識してもらえればと思って企画した」と遠山館長。「東日本大震災の後、さらに『この一瞬一瞬を大事にしたい』という気持ちが強くなったと思う。これまでの暮らしぶりを見直すような一助になれば」と話す。