松本市の喫茶店「半杓亭(はんしゃくてい)」(松本市中央3、TEL 0263-33-6187)で現在、「RANSON+民間・美術・研究~道神面と新しい郷土玩具展」が開催されている。
民芸面作家・宮田嵐村(らんそん)さんの道神面と、県内のクラフト作家・金井美和さん、野村剛さん、青山智子さん、すみれ洋裁店が道神面をモチーフにしたオマージュ作品を展示。ほかに全国各地の郷土玩具と各作家がイメージした新しい郷土玩具、合わせて約100点の作品が並ぶ。
道神面は、悪霊や疫病などを防ぐ神様として峠や辻・村境などの道端に祭られている「道祖神」をモチーフにした木彫りや張り子のお面。1956(昭和31)年、宮田さんが民俗玩具として創作を始め、1976(昭和51)年には松本伝統庶民工芸協会によって伝統工芸品に認定された。
2009年から始まり、3回目となる同展。最初は道神面のみだったが、昨年は宮田さんへのオマージュ作品も展示、今年はさらに郷土玩具が加わった。「民芸品というと『古い』『過去のもの』というイメージが強いかもしれないが、嵐村さんは『道神面』を作り出した。それを知って『新しく作ってもいいんだ』と思うようになった」と企画者の相澤和典さんは話す。
「新しい郷土玩具を」という依頼には苦労した作家もいたという。「作家さんは『自分の表現』があるから難しい面もあると思うが、『新しい信州の民芸品』としてどういうことをやりたいのかは伝わったと思う」と相澤さん。すみれ洋裁店の小口緑子さんは諏訪地方に祭られている「手長様・足長様」を現代風の木彫りで表現し、元になった民話を説明するしおりも付けた。「箱を開けると、しおりが入っていて…自分が想像していた『民芸品』の一つのモデルのような作品」。
「来場者は宮田さんを知っている人と、クラフト作家のファンの人と半々くらい。なかなか相容れないのかもしれないけど、面白がって見入る人もいる」と同店の高石店長。「民芸品は素朴で、どこか安心できるもの。量産されていても手作り感がある。今は衰退しているが、もう一度新しいかたちで取り戻せたら」と相澤さん。「郷土で眠っている民話などは世代を超えて共有性がある。地元で活動している人たちがそれをテーマにものづくりをしていけばきっと面白い。そんなきっかけとなる場として続けていければ」と話す。
営業時間は11時~19時。木曜と第1・3水曜定休。入場無料。6月19日まで。