陶芸家・田中一光さんの個展「秋・屈折率」が現在、松本・中町通りのギャラリー「GRAIN NOTE(グレインノート)」(松本市中央3、TEL 0263-32-8850)で開催されている。
カップや皿、片口などの器を中心に、オブジェも含め約300点を展示する。昨年から制作している土器のようなオブジェ「通奏低音」シリーズで試みたことを、普段使いの器でも展開。ブラウンベースの作品は不規則なラインや円の模様を入れた。ろくろで形を作った後に乾かし、削るようにして模様を描いて素焼き。その後、全体に釉薬(ゆうやく)をかけてから、模様の部分は剥がして焼き上げる。「これまで、釉薬を剥がすなんて考えたこともなかった」と田中さん。青色の正方形のタイルのようなパーツを貼り付けたカップや、水玉や直線をランダムに配したカップもある。
初めて制作したという陶板は不規則な形。練った陶土を寝かせたものをカットし、元の形をなるべく生かしたという。「例えば円だったら、コンパスできちんと描かなければいけないと考えていた。今は自分のリズムで、線や形を表現しても面白いと思えるようになった」と話す。
陶歴25年を迎える田中さん。自身の作陶活動を「修業時代を含めこれまでやってきたことは、『基礎体力』になっている」と振り返る。昨年ごろから、これまで定番としていた作品とは別に、新たなチャレンジを形にし始めた。顧客からは「田中さんらしさが出ている」「『静』から『楽しさ』を感じるようになった」という声があり、「どういう反応があるか不安もあったが、背中を押してもらっている」とも。
同ギャラリーでは7月にも個展を開催。「今回は間隔が短かったが、新しいものを作るという気持ちで挑んだので、苦しくなかった」と田中さん。今後は春と秋、年2回のペースが目標だという。「今は平面での展開だが、立体的な表現にも挑戦していきたい」と意気込む。
作品は全て販売する。価格は、マグカップ=2,800円~、カップ=3,400円~、片口=4,500円~など。営業時間は10時~18時。11月30日まで。期間中は田中さんが在廊する。