松本市在住の陶芸家・伊藤萌子さんによる個展「万物の詩を聴く」が現在、松本のギャラリー「ギャルリ灰月(かいげつ)」(松本市中央2、TEL 0263-38-0022)で開催されている。
皿や片口、ふた物、花器、オブジェなど約300点を展示する。野焼きで作った皿は、大小さまざまなサイズを用意。板状の土を用いるたたら作りで、河原で拾った石を型として使い、自然な丸みを出した。電気窯で焼き締めた後に、野焼きで表情を付けている。「野焼きも石を使うのも、『自分の意思を消したい』という思いからきている。うまくいかないときもあるが、同じものにならないところが良い」と伊藤さん。
一輪挿しは、黒や白、グレーのほか、土っぽい色のものや、マーブル模様など多彩な展開。オブジェは、正方形や卵型のほか、丸をつなげた形やフジツボのような形のものもあり、異星にあるような雰囲気を放つ。
伊藤さんは松本市生まれ。多摩美術大学卒業後、陶芸家のアシスタントとして活動し、結婚・出産を経て2019年、市内里山辺に開窯した。ここ数年で、「ずっと頭の片隅にあった」という思いを形にした作品に取り組むようになったという。「分かりやすく、多くの人に好かれるものと、そこから脱却した自分らしいもの。両方が必要でそのバランスを取るために試行錯誤している」と話す。
同ギャラリーには20年ほど前、大学時代から足を運んでいた。「当時から、吸収しようという気持ちで来ていた」と伊藤さん。陶芸を始めた頃から、「ここで個展を開きたい」と胸に秘めていたという。同ギャラリーの滝澤充恵さんは「ものづくりへの思いや、子育ての話なども聞くようになり、人生のステージが変わってきているのを感じていた。こうして作品を紹介できるのは感慨深い」と笑顔を見せる。
「社会にどっぷり浸かっていると感じている人に見てもらいたい。自身の内側を見つめるきっかけになれば」と伊藤さん。滝澤さんは「何か分からないけど、なぜか心が引かれる。その理由を探ってもらいたい」と呼びかける。
価格は、小皿=3,300円~、花器=4,400円~、ふた物=6,600円など。営業時間は11時~18時。火曜・水曜定休。11月9日まで。