ニューヨークと東京を拠点に活動する写真美術作家・木村尚樹さんの個展「凪翳-nagiei-」が現在、町家を活用したスペース「ご城下町家カフェ 茶noma」(松本市丸の内)で開催されている。
木村さんがこれまで手がけてきた作品の中から、国内で撮影した15点ほどを展示する。作品は、モノクロームに特化したオリジナルプリント。「今はデジタルの時代だが、プリント自体に価値がある。白と黒の無限のグラデーションは、全てグレーとも言えるが、その中に美を感じている」と話す。テーマは自身が「凪」と称する「もののあはれ」。風景のほか、同店のような町家の雰囲気を持つ作品もある。
母屋の和室2室のほか、奥にある蔵の中にも作品を設置。座ってゆっくりと眺められるようにした。店主の東正紀さんは「木村さんの作品をこの距離でじっくりと見られる機会はなかなかない」と話す。
木村さんは京都府出身。1987(昭和62)年に渡米して欧州での制作に臨み、1990(平成2)年にはニューヨークに居を構え、欧州を舞台とした写真美術作品を数多く発表した。近年は、日本の風景を被写体にした作品も手がけている。
同店は今年4月、東京で制作会社を経営していた東さんがUターンして開業した。木村さんとは東京に住んでいた時に、サウナで何度か顔を合わせるうちに仲良くなったといい、「自身が出展するイベントに誘ってくれるまで、お互い何をしているのかも知らなかった」と東さん。作品を見て、直感的に「好きだ」と感じたという。「人が写っていない写真の中に、自分を投影するように、入り込めるところが魅力」とも。
同店初の企画展として、東さんが木村さんに依頼した。明治時代に建てられた町家に合わせて、「日本の風景を見てもらえればと思って作品を選んだ」と木村さん。東さんは「誰もが気軽にスマホで写真を撮れる時代、魂を込めた紙焼きを見てもらいたい」と呼びかける。
作品は全て販売する。価格は6万6,000円~。営業時間は10時~18時。火曜定休。来年1月13日まで。