国宝松本城の堀の堆積物を取り除く浚渫(しゅんせつ)作業が12月15日に始まった。
松本城の堀の水は全て湧き水で、透明度が高い。底にある堆積物が見えてしまうことから、先月にはX(旧ツイッター)で、「堀の水が汚い」という誤解が話題になっていた。水質は問題ないが、夏場など水量が減った際に増殖したアオコなどが水面から出てしまい、臭いが発生することもあったという。市は歴史的な景観や快適な公園環境の維持向上を図るため、2018(平成30)年度から堀の総合調査や浚渫の実証実験を進めてきた。
作業は本年度から7年かけて、内堀、外堀、総堀の順に約3万平方メートルで行う。記録が残る明治以降、これほど大規模なものは初めてだという。観光客の多い時期を避けて9月~3月に行う想定で、総事業費は約14億円を見込む。
20日には、報道関係者向けに現地説明会が開かれた。今回採用した「水底土砂ポンプ浚渫工法」は、周囲の水が濁らないように水底の浮泥や堆積物を囲って隔離して、ジェット水流で巻き上げてポンプで吸引。泥水は、堀に浮かべた5.5メートル四方の作業船に設置した四角柱状の装置に吸い込まれ、城の北西部に設けた脱水装置へ運ばれる。その後、薬剤を混ぜることで分離させてろ過。水は作業船付近に戻して再利用し、泥は固めて産業廃棄物として処分する。固めた泥は1日に10立方メートルほどになるという。
ポンプに取り付けた浮きを黒いネットで覆ったり、脱水装置では泥に消臭剤を入れて臭いを抑えたりするなど、景観や観光客への配慮も。作業は平日の8時~17時ごろに行い、来年2月には一般向けの説明会も予定するという。市教育委員会文化財課の福嶌彩子さんは「文化財の価値を守り、訪れた人に楽しんでいただくことが目的。松本城の大きな特徴でもある、お堀の水がきれいなことを多くの人に知ってもらえれば」と話す。