松本・六九商店街にある和紙専門店「紙館 島勇」(松本市大手2、TEL 0263-35-1000)が、駐車場の一角に焼き芋店「十三里(とざり)」をオープンして1カ月が過ぎた。
焼き芋(100グラム194円)は、蒸気の出るオーブンで熱を通して仕上げる。使うのは茨城県産の「紅はるか」。同社の伊藤慶社長は「ねっとりとした蜜芋系に仕上げている」と話す。
オプションとして、オリーブオイルやバルサミコ酢、バター、バニラアイスなどを用意し、「味変」も楽しめるようにした。ほかに、真空パックの「焼き芋干し」(600円)や「焼き芋塩オリーブ漬け」(700円)、コーヒー(108円)、生ビール(450円~)などドリンクも提供。椅子とテーブルを置き、その場で食べることもできるようにしている。
同社は1921(大正10)年創業。市内に2店舗を構え、多彩な和紙や和風小物を扱うほか、和紙人形の展示やワークショップなども行っている。「コロナ禍で、人の流れも、お金の使われ方も変わった」と伊藤さん。客足が完全に戻ることがないままでは厳しいと、別事業を立ち上げる検討を始めた。ある程度の時間で自らできること、さらに和紙の需要が高まる年末年始の前の時期である「秋」をキーワードに思い付いたのが焼き芋だった。
サツマイモについて調べるうちに、松本大学のウェブサイトに研究論文が掲載されていることを見つけ、同大に問い合わせて足を運んだことも。開業の決め手となったのは、歌川広重の浮世絵「びくにはし雪中」に描かれていた「十三里」という看板。当時、江戸の城下町からサツマイモの産地だった川越までの距離とされ、「九里(くり)四里(より)うまい十三里(さつまいも)」というしゃれが受けて評判になったという。「日本文化とつながった気がして、やろう、という気持ちが固まった」と振り返る。
1月末から本格的に準備を始め、プレハブを改装し、貯蔵庫やオーブンなど設備を整えた。5月にプレオープン。当初、夏場はサツマイモの仕入れが難しいと考えていたが、安定供給のめどがついたため、通年営業をすることにした。「始めてみて分かることがたくさんある。これからも試行錯誤しながら、『十三里の焼き芋』を追求していきたい」と伊藤さん。今の時期の新芋は、ホクホク感が出やすく、焼き方を調整して仕上げているという。「寒くなってきて、『急に食べたくなった』という人が増えてきた。できれば隣の『島勇』もチラッとのぞいてもらえるとうれしい」とも。
営業時間は11時~17時。水曜定休。