松本市出身の映画監督・山崎貴さんが9月3日、特別展を開催している松本市美術館(松本市中央4)で、高校生を対象にしたトークショーを行った。
同館が毎年、高校生と作家の出会いの場として企画し、20回目となる「高校生講座」として開催。約60人が参加した。今後、公開を予定している作品など、「解禁前情報」も多い山崎監督に配慮して「NG」札も用意。時おり、笑顔で札を掲げながらも、和やかな雰囲気で進行した。
前半は、映画監督になるまでの経緯や実際の製作過程について話した。清水中学校3年生の時に友人と初めて撮った8ミリ映画「GLORY(グローリー)」については、「当時はフィルムを買うのにも、現像するのにもお金がかかり、大変だった。中学生が撮ったということが話題になり、すごいと言われたことが映画製作の原点」と回想。40年以上所在が分からなかったフィルムが昨年見つかり、「ずっと『思い出補正』がかかっていたのか、見返したらひどかった。美術館でも上映してほしいと言われたが嫌だった」と笑顔を見せた。
山崎監督は松本県ケ丘高校を卒業して上京。阿佐ヶ谷美術専門学校在学中には、「イラストや造形も考えたが、それぞれの分野ですごい先輩がいた。東京はこんな人たちがゴロゴロいるとショックを受けた」と言い、自身の道を決めたと振り返った。映画製作の過程については、図を見ながら紹介。自身の作品のシーンを交えて用いている技術や、キャスティングの方法を説明した。
後半は、高校生からの質問に応じた。「ピクサー・アニメーション・スタジオで働きたい」という生徒には、無料の3DCGソフト「ブレンダー」を使うことを勧め、「まずは簡単なものから始めて成功体験を重ねることが大事」とアドバイス。進路について、親や周りの人から反対されるという生徒には「聞いているふりをしながら、自分で調べて、進んでほしい。ただ、『好き』だけで突き進むと、恋愛と同じで逃げられてしまうこともあるので、軸足を置きつつ、視野を広げて」とエールを送った。
同展は絵コンテやデザイン画、出演者の衣装や実物大のセットなど約300点を展示。映画「永遠の0」の撮影に使われた零戦コックピット飛行シーンの撮影体験(平日のみ、要予約)も用意する。8月24日には来場者が2万人を超えた。見どころについて、「いろいろな人の手技、手仕事のすごさを感じてほしい」と山崎監督。同展に合わせて中心市街地では、オリジナルの応援キャラクター「Y-cat」のスタチューなどを展示する「まちなか出張展」も開催している。
同美術館の開館時間は9時~17時(入場は16時30分まで)。入場料は、大人=1,300円、大学生、高校生=900円、中学生以下無料。月曜休館(祝日の場合翌平日)。10月29日まで。