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松本で「Book of Hours」展 時祷書×モノクロ写真、「立ち上がる空気」感じて

時祷書とモノクローム写真が生み出す空間

時祷書とモノクローム写真が生み出す空間

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 時祷(じとう)書の写本リーフと現代美術家・井川淳子さんの写真作品を展示する企画展「Book of Hours 井川淳子と装飾写本」が現在、松本・筑摩の「ギャラリー石榴(せきりゅう)」(松本市筑摩2、TEL 0263-27-5396)で開催されている。

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 時祷書は聖書の抜粋や祈祷文などを収めた装飾写本で、羊などの皮でできた獣皮紙を使ったものもある。同展ではギャラリー所蔵の完本をばらした状態で10点展示。台上に置いたものもあり、彩色豊かな装飾や獣皮紙の質感など細部まで見ることができる。

 井川さんは、物が光を受けることによって見せる色や艶めきを捉え、モノクローム写真で表現。反射を避けるためガラスなしで額装する。「時祷書と共に展示するので、アンティーク趣味や神聖な感じに寄り過ぎないように選んだ」という作品は、ブリューゲルの絵画「バベルの塔」のコピーを積み上げて撮影した「バベル」や、明け方にあいまいとなる海と陸の境界を見つめた「すべての昼は夜」など9点。ふち縁まで液体で満たした杯を写した「ここよ、いつでも」は、内側と外側が同じような漆黒で、何も入っていないようにも見える。

 井川さんは1992(平成4)年、東京藝術芸術大学大学院美術研究科壁画専攻修了。石によるモザイク、紙の立体作品を経て、2000(平成12)年から写真作品を発表している。撮影はフィルムカメラを使用。「フィルム写真は現像するまで写っているものが分からないが、人の目では気付かないものを見せてくれることがある。カメラの目と自分の目のずれが生まれるのも面白い」と話す。

 同ギャラリーの薄井みゆきさんが、中世美術の一ジャンルでもある時祷書を別のものと組み合わせて展示したいと企画した。「文字を写すことと装飾、それが一体となった『物』の強さを感じてもらえればと思った。井川さんの作品の精神性、ストイックさと合わせることで、互いに際立つ表情がある」と薄井さん。

 どちらの作品も、ガラス越しではなく直接見ることができる。「場の感じ、2つの違うものがあることで立ち上がる空気を感じ取ってもらえれば」と井川さん。薄井さんは「それぞれの作品があるこの空間自体が、新しい作品になっている。会期中しか見られないものなので、足を運んでほしい」と呼びかける。

 営業時間は10時30分~18時。月曜・火曜定休。入場無料。4月2日まで。

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