正倉院宝物を精巧に再現した模造作品を展示する「よみがえる正倉院宝物-再現模造にみる天平の技-」が現在、松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)で開催されている。
一昨年から全国7カ所で行われてきた巡回展。正倉院宝物の模造制作は、明治時代に奈良・東大寺で開催された奈良博覧会を機に始められ、現在は宮内庁正倉院事務所が、単なる模倣ではなく宝物と同じ素材や技法を用いて当初の姿を再現することに重点を置いて行っている。同展では、再現模造作品と共に、模造制作の際の映像や関連資料なども紹介する。
6章構成で、楽器や調度品、仏具、武具など81点を展示。8年かけて完成させた「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」は、華麗な装飾だけではなく、演奏ができる楽器としての再現を目指したという。仏前で香をたくための香合「黄銅合子(おうどうのごうす)」は、模造の制作を通じて、五重相輪の塔の形をしているふたのつまみの部分に、50枚以上の座金が用いられていることや、塔の各層に暈繝(うんげん)彩色やガラス玉の装飾が施されていることを確認。原宝物ではほとんど失われている装飾を忠実に再現した。同館学芸員の大島浩さんは「実物は傷んだり朽ちたりしている部分もある宝物の当初の姿と、伝統技術の熟練の技を知ることができる。美と技、両面を堪能してもらえれば」と話す。
同館は、約1年間の大規模改修工事が完了。企画展示室の照明のLED化や空調設備の更新、授乳室の新設などを行い、開館20周年を迎える21日にリニューアルオープンした。20日に開かれたオープニング式典では、臥雲義尚市長が「(リニューアルを終えて)市民が芸術に触れる場として、より地域活性化、観光振興にも努めたい」とあいさつした。
同展の開催に合わせて、期間中にはさまざまなイベントも実施。「アートに挑戦!ようこそ漆工芸の世界へ」と題したワークショップでは、「象嵌(ぞうがん)螺鈿」(5月15日)、「沈金」(同22日)の体験を行うほか、鼎談(ていだん)会「正倉院宝物の再現構造」(6月4日)も予定する。
開館時間は9時~17時(入場は16時30分まで)。入場料は、大人=1,500円、大学生、高校生=1,000円、中学生以下無料。月曜休館(5月2日は開館)。6月12日まで。