松本市出身の日本画家、西郷孤月(さいごうこげつ)の生誕135年記念展「孤月 甦る」が現在、松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-3400)で開催されている。
西郷孤月(1873-1912)は、横山大観や下村観山、菱田春草(長野県飯田市出身)と並んで、日本画の大御所である橋本雅邦一門の四天王と言われ、日本美術院の創立に重要な位置で関わりながら、美術史の主流に名を留めることなく、38歳という若さでこの世を去った悲運の画家。
今年はその孤月の生誕135年にあたり、同展では過去に開催されてきた「孤月展」を大きく上回る93点の作品を展示する。
第1章から6章までテーマごとに分けられた展示展開で、狩野友信に入門したとされている15歳ごろの作品「鯉のぼり」や、大観・早春との対幅や合作、4枚そろっては初展示となる「四季花鳥図」など貴重な作品が並ぶ。
中でもひときわ目を引くのは、けしの花畑の中にぼんやりとたたずむ白馬を描いた「春暖」。孤月自身が「不自然であったか」と残した後悔の言葉とは裏腹に、幻想的で魅力的な画。さまざまな作家や研究家がこの作品を絶賛し、「近代日本画の改革運動の先頭に立った作品」と言われるほど高い評価を得ている。
3日には「よみがえる孤月」と題した座談会が行われ、100人ほどの聴講者が集まった。伊藤正大さん(美術ジャーナリスト)、佐藤玲子さん(元松本市立博物館館長)、樋口福治さん(孤月会会員)、吉野俊さん(孤月会会長)の4人が、「自分と孤月との出会い」をはじめ、孤月の生い立ちや作品についての見解などを語り合った。展示だけでは知り得ない内容に、メモを取りながらうなづく人も。
吉野さんは「この展覧会で『西郷孤月』という人物の存在が見直され、個人収蔵の作品や資料が出てくる可能性がある。離婚や東都画壇から姿を消すなどの『マイナスの孤月感』が、同展で『プラスの孤月感』になれば」と話し、2時間に及ぶ座談会を締めくくった。
11月11日からは一部作品の入れ替えを予定。同16日には同館学芸員によるギャラリートークも行う。
開館時間は9時~16時30分(入場)(11月21日は19時30分まで入場可能)。入館料は、大人=1,000円、高大生=600円ほか。月曜休館。今月30日まで。