陶芸作家、島るり子さんの個展「うつわ展」が9月15日まで、「ギャルリ灰月(かいげつ)」(松本市中央2、TEL 0263-38-0022)で開催されている。
新潟県出身の島さんは、高校のときに選択した工芸の授業を担当していた教師に勧められ、初めてろくろを回した。「(ろくろを回すのが)すごく面白かった。あんなにのめり込んだものは、ろくろが初めてだった」と島さんは振り返る。
その後、父親の反対を押し切って京都の陶芸家に弟子入りしたが、ひどい手荒れや体調不良に苦しみ、陶芸を続けることが難しくなったため、2年ほどで実家に戻ることになってしまった。しかし、手荒れに苦しむ中でも陶芸への熱は冷めず「陶芸に限らず『手』は毎日使う。だったら、好きな『焼き物』をしたい」と思い、焼き物を見て回る旅に出た。旅で出会った女性陶芸家の下で手伝いをしているうちに、「手伝いの合間に作品を作るのではなく、自分で窯を作って自分のペースでやりたい」と新潟県に戻り、小さな工房と、女性陶芸家が持っていた窯を見よう見まねで作り、少しずつ陶芸を続けてきた。
結婚や出産などで13年ほど陶芸から離れていたが、現在は長野県伊那市にギャラリー兼工房の「草草舎」と自作の穴窯を構え、制作を行っている。
島さんの作品は、「焼締め(やきしめ)」と「粉引(こひき)」という手法で制作されているのが特徴。「焼締め」は、釉薬(ゆうやく)をかけないため少しざらついたような感触で、うっすらと光沢が見える。「粉引」は、鉄分の多い赤土の上に白い化粧土をかけ、さらに透明の釉薬をかけているため、つや感がある。縁にのぞく赤土の表情が一つ一つ違うため、じっくりと吟味する客も少なくない。
同ギャラりーの花器に生けられている草木は、島さん自身が採ってきて生けたもの。「花器は1輪でもいいようなサイズにした。花でなくても、その辺に生えている葉っぱだって、生けたらきれいに見えるしね」と島さん。
「最近気づいたことなんですけど…」と切り出す島さんは「手が荒れるのに、『どうして陶芸をやるんだろう?』と思っていたけど、今までろくろを回してきて『嫌だ』と思うことがなかったんです」と、自分が「焼き物が好きだ」という気持ちを再確認したという。「何にでも使えるものや、『この料理おいしそう』と思ってもらえるようなものを作っていこうと思う」。
作品はすべて販売も行う。価格は、皿=3,150円~、器=3,360円~、花器=7,350円~。営業時間は、日曜・月曜・火曜=11時~18時30分、木曜・金曜・土曜=10時30分~19時。水曜定休。