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松本のアートギャラリーで村上慧さん個展 家を背負って歩く生活を「提出」

ドローイング作品とともに「初代の家」も並ぶ

ドローイング作品とともに「初代の家」も並ぶ

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 松本・深志のアートギャラリー&カフェ「awai art center(アワイアートセンター)」(松本市深志3、 TEL 090-2427-4374)で現在、アーティスト・村上慧さんの個展「家の提出」が開催されている。

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 2014年4月から、発泡スチロールで制作した家を背負って日本各地を歩きながら暮らしている村上さん。寝る時は誰かの土地を借りてそこに家を置き、土地を借りた家や周辺の家を描くことを習慣にしており、同展では30点以上のドローイングと、昨年3月まで背負っていた「初代の家」を展示する。描かれているのは、瓦屋根の木造住宅や商店、長屋やコンクリートの建物などさまざま。解体して壁に並べた「初代の家」は、汚れやめくれた部分、テープで修理した跡が残る。

 現在も同プロジェクトは進行中で、2代目となる「新しい家」は広島県にある。手回り品の範囲を超えるため電車には乗れず、移動は基本徒歩。毎日、たどり着いた地で交渉して場所を借りて家を置く。「その瞬間に家は『背負って歩くもの』ではなく『帰る場所』になる。家=寝室、近くの銭湯=風呂、公衆トイレ=トイレ、公園の水飲み場=洗面所というように、町全体が大きな家になる」と村上さん。町を間取り図で表現することもある。

 村上さんは1988年東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部で建築を学ぶうちに、「建築というのはあらゆる人と関わるもの。狭い世界の中で限られた人と接するだけでは駄目だ」と感じるようになったという。在学中からアートプロジェクトに参加。東日本大震災を機に「根本的なところ、『住む』ところから始めたい」という思いが強まった。

 「越後妻有アートトリエンナーレ2012」では、アーティスト軍団「空鼠(そらねずみ)」のメンバーとして老人ホームの駐車場の一角に廃材を使って家を建て、そこに3カ月間住みこんで人が集団で移住することでその地域に暮らす人々と相互にどのような影響を与えるのかという問題提起を試みた。ほかにも全国各地のアートイベントに参加。生活と人、人との関わりからどのような現象が生まれるのかを身をもって実験するような活動を続けている。

 「自分の決断は少なからず社会とつながっている。どんなことも社会的なアクションになり得る」と村上さん。カフェスペースでは2月に出版した絵本「家をせおって歩く」(福音館書店)の原画も紹介。プロジェクトを続ける中での出来事なども知ることができる。

 ドローイングは全て販売する。価格は1万3,000円~。営業時間は12時~19時。火曜・水曜定休。7月4日まで。同3日にはすき焼きを食べながら、村上さんと編集者の川村庸子さんが気になることを話すイベント「すき焼きパーティー」を行う。料金は500円(1ドリンクオーダーが必要)。申し込みは同店まで。

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