信州大学人文学部芸術コミュニケーション講座(松本市旭3、TEL 0263-37-3247)は11月17日から1週間、松本市美術館と共同で服をテーマにした展示イベント「Costume in play」を開催した。
同学部の学生が中心になり、服などの身近な「装い」をテーマにした作品の展示や、ワークショップ、パフォーマンスなどを行った。服をテーマに作品作りをしている現代美術家の西尾美也さんと学生が話し合って作り上げた「Overall:Foot Soldiers」は、学生が同イベントのために収集した古着を用いたパッチワークの作品。旧日本軍の「松本歩兵第50連隊」の兵士をイメージしてデザインした。ほかにも、キム・スージャさん、曽根裕さんの映像作品や、西尾さんの作品、これまでの学生の取り組みなどを展示。会場では、学生自身が来館客に作品の解説を行った。
「まず、何かが完成する現場に直面して感じること。そしてそれを周りに伝えていくことが課題」と同学部の金井直准教授。大学という場所に縛られることなく、外へ出てプロの作家の仕事をサポートしながら、「アートな表現をしている人」と「見ている人」をつなぐことがゼミのテーマでもあるという。これまでも同館やまつもと市民芸術館などと企画を共催。今年2月には市内をバスで移動しながら展示やパフォーマンスを鑑賞するツアー「松本オムニバス まちとアートをつなぐ旅」を行った。
同企画は今年7月、市内の小中学校や商店街に声を掛けて古着を集めることからスタートした。1,600枚ほど集まった古着を前に「作品のために古着を切ることが、学生たちにとっては最初の課題になった」と金井准教授。いらなくなったとはいえ、「着ていた人の思い出や歴史が詰まっている服」を切りばりしていくことに戸惑いがあったという。その後、自分たちでもさまざまな企画に取り組みながら、10月ごろから展示会に向けて作品作りを開始した。「西尾さんと話し合いながら信頼関係を築いていった。できあがったときは学生も感動していた」(金井准教授)。
23日に行ったワークショップでは、古着を使って覆面を制作。参加者は糸で縫ったり、ボンドではり付けたりしながら1時間ほどかけて思い思いの覆面を作り、最後にはできあがった覆面をかぶって展示を見学した。ワークショップを担当した西澤朱織さん(人文学部3年)は「わたしも最初、『現代美術』はよくわからないものだと思っていた。でも、企画の準備を通して『現代美術』というのは、技術よりも手法や考え方が重要なんだと思うようになった」と話す。「『現代美術』を少しでも身近に感じてもらえればと思って取り組んだ。(参加者には)実際に喜んでもらえてよかった」とも。
同講座では、年間を通じてさまざまなな分野の作家を迎えて話を聞く機会を設けている。「作家にとっても、学生にとってもパブリックな場で行うことに意味があると思う。ほかの機関とも連携していきながらこれからも取り組んでいきたい」と金井准教授は話す。