
陶芸家・田中一光さんの個展「青の主題による変奏曲 第11変奏」が現在、松本・中町通りのギャラリー「GRAIN NOTE(グレインノート)」(松本市中央3、TEL 0263-32-8850)で開催されている。
カップや皿のほか、オブジェも含めて約400点を展示する。青や濃紺、水色などのブルー系を中心に、アイボリーやブラウンを用いた器を用意する。
手描きの水玉模様を施したシリーズは新たな試み。田中さんの定番は単色で、ツートーンや規則的な水玉模様を配した作品はあったが、「模様を付けるのは、自分の感覚として少しずれがあって、やってはいけないと思っていた」と話す。今年の「工芸の五月」の企画「ほろ酔い工芸」で皿の制作を依頼された際に、「自由に作ってほしい」と言われたことがきっかけになった。「ヒントになったのは子どものお絵描き。無意識に描く楽しさを感じ、どんどん心が開放されていった」と振り返る。
同じ色の釉薬(ゆうやく)を何度も重ねて、光が交差して生まれるような濃淡の表情を出した作品や、異なる青色を組み合わせたり、あえて素地を残したりした作品もある。「部分的に器を釉薬にドボンと漬けてみたり、素地をそのまま生かしたりというのもこれまであまりやってこなかった。どうなるか分からないけどやってみようというわくわくした気持ちで取り組むことができた」と田中さん。
昨年、コロナ禍を経て同ギャラリーでの個展を5年ぶりに再開。その際に発表した土器のようなオブジェ「通奏低音」シリーズの新作も用意する。ごつごつした突起を付けたものや、ニードルで引っかいて付けた模様に水色の釉薬を埋め込むようにして素地のまま焼いたものもある。
陶歴25年を迎える田中さん。「『ほろ酔い工芸』をきっかけに、新たなチャレンジをしようと思えたこと、そしてそれを形にできたことがうれしい。これからも、自分なりの土との対話を形にしていきたい」と意気込む。
作品は全て販売する。価格は、小皿=1,900円~、カップ=2,800円~など。営業時間は10時~18時。7月6日まで。期間中は田中さんが在廊する。