
県内各地の祭りや芸能の現状、継続に向けた活動について話し合う「祭り芸能の担い手座談会」が3月1日、安曇野市豊科交流学習センター「きぼう」(安曇野市豊科)で行われた。主催は長野県と信州アーツカウンシル。
前半は事例発表を行った。安曇野市の岩原祭典保存会会長の尾日向和孝さんと次期会長の三枝修さんは市無形文化財「山神社お舟祭り」について紹介。市内では唯一の「担ぎ舟」だが、コロナ禍で会員数が減少。昨年はメディアも活用して担ぎ手を募集し、58人が集まった。「祭りを守るには時代が変わってきた」と尾日向さん。今後は、子どもが担ぐ「子ども舟」の復活も目指すといい、三枝さんは「担いだ経験が、大人になった時に再び関わろうと思うきっかけになるはず」と話した。
国重要無形民俗文化財「遠山の霜月祭り」が受け継がれてきた飯田市上村地区・南信濃地区では、祭り好きの若者が集まって2014(平成26)年に木沢霜月祭り野郎会を立ち上げた。現在の会員は、県外在住者や女性、地域の中学生も含め10~50代の45人。野郎会の会長・木下隆彦さんは「3年目までは我慢の時期。4年目から任せてもらうことが増えて、会員もやりがいを感じるようになった」と振り返った。
後半の座談会では、事例紹介をした3人に加え、伊那市を拠点に活動する舞台芸能集団「田楽座」座長の中山洋介さん、飯田市美術博物館学芸員で、野郎会のメンバーでもある近藤大和さんが登壇。事例紹介で岩手県の郷土芸能「鹿踊(ししおどり)」について話した小岩秀太郎さんと、信州アーツカウンシルゼネラルコーディネーター・野村政之さんがモデレーターを務めた。
「継承が難しい祭りや伝統が増える中で、担い手についてどう考えるか」という小岩さんからの問いには、「250年の歴史を守りたいという思いが一番強かった」と尾日向さん。三枝さんは「昨年の経験を踏まえて、良い部分は継続し、変えなければいけない部分は変えていく」と続けた。
地域の子どもたちとの関わりについては、「学校によっては『郷土芸能部』という部活があり、そこが入り口となっている」と中山さん。木下さんは、野郎会は当初、入会は高校卒業後だったが、「それまで待っていられない」という子どもたちからの要望を受け、中高生の入会を受け入れるようになったと説明。「文化祭では各地区の舞を発表している。近藤さんは全ての地区の舞ができる」と話すと、会場からは「おお…」と感嘆の声が上がった。
座談会は、信州アーツカウンシルが県内各地で行ってきた文化芸術活動支援について紹介する「パレード」の番外編として企画した。野村さんは「各地域の課題を、県全体の課題と捉え、行政と民間が一緒に考える場として、今後も続けていきたい」と話す。