料理・雑貨スタイリストの伊藤まさこさんが松本での生活をつづった日記本「まいにち、まいにち、」(PHPエディターズ・グループ)が8月22日、刊行された。
同書は、昨年8月7日から今年7月7日までの約1年間の暮らしを日記形式で紹介。7月に行われた「平成中村座」や、中町の喫茶店「まるも」やそば店「三城」などといった市内の店名も随所に登場し、昨年松本へ移住した伊藤さんの何気ない日常生活が描かれている。
同社書籍編集部の見目勝美さんは「伊藤さんは、人一倍好奇心の旺盛な女性。引っ越し先の松本は、彼女の好奇心を刺激するもの、こと、人、食べ物、自然がいっぱいだったよう」と話す。話を聞いているうちに、伊藤さんがポツリと「日記を書いてみようかな」とつぶやいたので、見目さんが「書いたら、ぜひ、見せてね」と言ったところ、次々とメールが届くようになったという。「それで、これを本にしようということになった」(見目さん)。
「永い冬を乗り越え、春が近づく楽しさを こんなにかんじたのは初めてかもしれない。」(4月5日 「私の好きな松本」より)と厳しい松本の冬を越え、春を迎えた時期に伊藤さんは記している。「(同書を読むと)松本に引っ越してから、松本の暮らしや人との交流、自然の美しさや文化の高さに伊藤さんが引かれていく様子がのびのびと伝わってくると思う」と見目さん。
編集過程で、見目さんの「松本観」にも変化があったという。仕事の関係で、数年前まで長野県に度々足を運んでいた見目さんの松本のイメージは「松本城や上高地の入り口、山々に囲まれた自然豊かな城下町」といった「観光地」的なものだったが、そこに「暮らし」の風景が加わった。「伊藤さんにお店を紹介されたり、一緒に出かけたりする中で、『食の充実』を感じるようになった」と見目さん。保存食にまつわる日記を伊藤さんが書くと、影響されて杏のシロップ漬けなどを作ったという。「昔ながらの技を今に伝えるかごを扱うお店や松本民芸、古本屋さんの品ぞろえが充実していることなど、文化度の高いところだと改めて思った」とも。
「自然豊かで文化にあふれた松本に興味を持つ人や、伊藤さんのように、忙しい中にもゆったりとした気持ちで暮らしを楽しめる人が増えてくれれば、本づくりに携わった編集者としてもうれしい限り」と見目さんは話す。
新書版で価格は1,523円。