北安曇郡松川村の「安曇野ちひろ美術館」(松川村西原、TEL 0261-62-0772)で現在、企画展「手から手へ展」が開催されている。
同展は、東日本大震災後、スロバキア在住の絵本作家・降矢奈々さんの呼び掛けから日本の絵本作家が中心となり、世界中の仲間に募った作品を展示する企画展。昨年3月のボローニャ(イタリア)を皮切りに、ブラティスラバ(スロバキア)、ワルシャワ(ポーランド)、アムステルダム(オランダ)、コペンハーゲン(デンマーク)と巡回して来た。日本巡回の最初を飾る同館の展示からは日本の作家53人が加わり、7カ国110人150点の作品を展示。全て同展のための描き下ろしという。
降矢さんは「内部被爆」というストレートなタイトルを付けた作品を展示。各作品には作家からのメッセージが添えられ、降矢さんは「子どもたちの未来のために、これ以上負の遺産を増やしてはならない」と記している。伊藤秀男さんはうちわに反原発のメッセージと怒りを描いた作品を出展。うちわを収めた額の背景にも、さまざまな強い思いを表現している。
風刺的なものも多い。アレックス・デ・ウォルフさんは、散歩をする少年と犬が宇宙服のようなものを身に付けて歩いている姿を描いた。「放射能を浴びないように防護服を身に着けていることが『日常』となってしまっている様子を表現しているのだと思う」と同館の長井瑶子さん。ほかに、さまざまな動物の親子が安心して眠っている様子や、笑顔の子どもたち、愛に満ちあふれた世界を描いた優しい作品も多く見られる。各作家が添えたメッセージの原本も展示。「どれも、作品と同じくらい丁寧に思いを込めて書いているのが伝わってくる」(長井さん)。
4月14日にはオランダからアレックス・デ・ウォルフさんを招き、ポップアップカードを作るワークショップ(参加無料、要予約)や、館内のカフェ内に特設ポストを設ける企画「大切な人に手紙を書こう」も行う。「アレックスさんからはいろいろな手の話や、自分の手で村を水害から守った少年の話の後、『手』を生かしたカードを作る。手紙は旅の記念にもなるのでぜひ活用してもらえたら」と同館の田邊絵里子さん。
「震災から2年がたち、少しずつ心の中から小さくなりかけていると思うが、絶対に忘れてはならない出来事。作品を通して、思いを新たにしてもらえたら」と長井さん。「大切な人への思いを育む時間を、豊かな自然の中で過ごしてほしい」とも。
開館時間は9時~17時(GWは18時まで)。第2・4水曜休館。入館料は、大人=600円、高校生以下無料。5月7日まで。展示作品(一部を除く)は、巡回展会期中にチャリティー販売され、作品の売上金は全て被災地の子どもたちを支援する活動に寄付される。購入方法の詳細はホームページで確認できる。