現在上演中の信州・まつもと大歌舞伎の演目「天日坊(てんにちぼう)」の出演者らが7月15日、人力車に乗って松本市の中心部から松本城までを行進する「登城行列」を行った。
今月12日から始まった同公演。開催は2年ぶり3回目、同行列も3回目となる。スタート地点の松本郵便局前では、行列前に松本蟻ヶ崎高校書道部による書道パフォーマンスが行われた。音楽に乗せてリズミカルに文字を書いていく生徒たち。歌舞伎の歓迎や、主演の中村勘九郎さんが今年2月に「六代目中村勘九郎」を襲名したことへの祝いの言葉、「絆」などの文字を力強く書いた。書き上がった瞬間、観客からは大きな拍手が送られ、感動で涙する部員もいた。
パフォーマンスが終了すると、行列がスタート。信州松本松深會(しょうじんかい)のみこしを先頭に、勘九郎さん、中村七之助さん、中村獅童さん、演出を手掛けた串田和美さんらが人力車で松本城までを練った。沿道には大勢の人が詰め掛け、大混雑。出演者の名前や「中村屋!」の掛け声が上がり、あまりの歓迎ぶりに驚きの表情を見せた出演者たちだったが、サインや握手に応じながら松本城を目指した。
30分ほどかけて松本城に到着。天守閣前に用意された特設ステージでは、出演者10人によるあいさつをはじめ、同公演のテーマ音楽の演奏などが披露された。ステージに用意された「大口坊」と書かれた紙に、同校書道部員が筆を加えて「天日坊」の文字を完成させ、会場を沸かせる一幕も。勘九郎さんは「襲名してから初めての松本。こんなに歓迎してくれてうれしい」とあいさつ。七之助さんは「街全体が公演を支えてくれていると感じる。こういったことはほかではあまりない」と話し「『どうせうそだろ』と思っている人もいるでしょ? 本当に心から思っているんです」と付け加え、会場は笑いに包まれた。最後に串田さんが「松本は街が公演を支えてくれる素晴らしい環境。ぜひ4回、5回と続けていきたい」と声高らかにあいさつすると、大きな拍手が沸き起こった。
公演はまつもと市民芸術館・主ホールで18日まで(当日券あり)。期間中は同館2階のシアターパークで、公演グッズなどを販売する「縁日横町」や、大道芸も行われる。