株式会社鴻池組(本社:大阪市中央区)と有限会社スワニー(本社:長野県伊那市)は、2025年3月、大阪・夢洲の2025年日本国際博覧会施設整備事業小催事場建設工事(施設正式名称:EXPOナショナルデーホール)において、3Dプリンターを用いて製作した演台・司会者台を備品の一つとして納品しました。原料には当社現場から回収した、資材の梱包などに使用されるPPバンドを用いました。
3Dプリンターを用いて製作した演台
3Dプリンターを用いて製作した司会者台
【背景と経緯】
建設現場では工期中に多様な産業廃棄物が発生します。特に廃プラスチックは、資材の梱包材や養生材などから大量に生じており、その性質が多岐にわたるため、マテリアルリサイクルが難しく、大部分がサーマルリサイクル(※1)されているのが現状です。この課題に対し、鴻池組では以前から取り組んできたマテリアルリサイクルの経験を活かし、3Dプリンターによるプランター製作のノウハウを発展させ、博覧会会場で使用する演台・司会者台の製作に挑戦しました。
(※1)廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを活用するリサイクル方法。
PPバンド回収から3Dプリンターによる演台・司会者台製作のプロセス
「建設の過程で発生した廃プラスチックを原料に実用的なものを製作し、撤去工事の際はマテリアルリサイクルの資源循環に戻す」という大阪・関西万博のテーマに沿った取り組みとして博覧会協会に提案し、承諾を得て製作しました。
(※2)廃プラスチックを粉砕・溶融してプラスチック材料として粒状に成型すること。
リサイクルマテリアルを用いて演台・司会者台を製作するために使用したペレット押出式3Dプリンター「EXT TITAN Pellet」
【内容と成果】
材料となるPPバンドは、再び原料に戻すリペレットを株式会社TBM(本社:東京都千代田区)が行い、スワニー保有の大型のペレット押出式3Dプリンターを用いて製作を行いました。リサイクルPPペレットは、演台・司会者台ともそれぞれ50%以上(残りは、強度を向上しつつ形状を安定させる機能を持つフィラー材を含むコンポジット材料)使用しました。また、大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」とそれにインスパイアされたモチーフを取り入れた意匠部については、旭化成株式会社(本社:東京都千代田区)が製作した環境配慮型材料であるセルロースナノファイバーフィラメント材を用いて、3Dプリンターで出力しました。これにより、演台・司会者台全体が環境に配慮した材料で製作されました。
今回製作した演台・司会者台は、3月23日の大阪ヘルスケアパビリオン開館式、3月27日の警察と消防の専門部隊発足式で使用されました。万博開催期間中も様々な式典やイベントで使用される予定です。
【鴻池組 3Dプリンター技術 担当者コメント】
建設現場におけるマテリアルリサイクルについて、また新たな取り組みができたと考えています。今回は一品生産だったため3Dプリンターという手段をとりましたが、今後も案件に応じて柔軟な発想でマテリアルリサイクルに積極的に取り組んでいきたいと思います。
【鴻池組 工事現場事務所 勤務者コメント】
現場で作業員と根気よく集めた廃プラを原料に、3Dプリンターで資源循環できる演台を製作するということこそがこの取り組みの一番の根幹であり、多様な形の製品を廃プラから作れるということを未来社会の実験場という万博の場でアピールしたいと考えています。
この万博でサーキュラーエコノミーのモデルケースを前向きに示すという当社の姿勢を受け入れて頂いたことに深く感謝します。
有限会社スワニー
1970年に弱電・電子機器の製造業として設立、2010年に製品設計会社として事業転換。最新の3Dプリンタと3Dモデリング技術を駆使し、製品の設計、試作、量産化を一貫してサポートする企業として数多くの実績を上げ、事業を急速に拡大しています。
2021年にSpyra社とパートナーシップを締結。Spyra社製品の日本総代理店として活動を開始しました。その他、行政と連携し完全地産の製造業ご当地お土産プロジェクトや商店街の空きスペースを活用した内職ワークスペースなどの事づくりプロジェクトの発案・主導も行っています。また、3Dプリント樹脂型デジタルモールドなどの新技術も生み出し展開、アイデアを迅速に形に出来る、日本で一番頼ってもらえる設計会社を目指しています。
公式サイト: https://www.swany-ina.com/
Facebook: https://www.facebook.com/SWANY3dp