松本市内の各所で、住民の手でホタルを復活させる取り組みが行われている。
松本市神田の農業用溜池「千鹿頭池(ちかとういけ)」から引いた水路では6月中旬ごろから、ホタルの姿が。2008年から地元住民有志約80人で作る「千鹿頭の緑と環境を守る会」が池の水質浄化や周辺の環境整備を開始。岸の手入れや下草刈りなどを行う中で「環境改善が進めば一時、姿を消したホタルも住めるようになるのでは」と、ホタルの幼虫とエサとなるカワニナを放した。
近くのホタル出現地の視察や勉強会にも参加。「昨夏は1日10~15匹ほどだったが、この夏は数え切れないほどのホタルが出現した」と同会ホタル育成部会会長の小林伸嘉さん。今年はさらに、ヘイケボタルとゲンジボタルが同時に現れるという珍しい状態に。「梅雨明けが早く、通常はゲンジボタルより遅れて現れるヘイケボタルの成育が良かったのでは」(小林さん)。6月中旬ごろから出始め、下旬には約300匹が出現した。7月中旬ごろまで観察できたが、現在は終了している。「3年間、少しずつ取り組んできたことが実を結んだ。これからも様子を見ながら良い状態を保っていきたい」
松本市庄内の大型ショッピングセンター「コモ庄内」(出川1)の北東側にある「多自然水路」でも今年は多くのホタルが舞った。2003年夏に現地調査を開始し、住民有志による「庄内ほたると水辺の会」が水路の手入れを行い、勉強会や観察会などを重ねてきた。
16日の観察会では、写真撮影に来た人や家族連れなど多くの人が訪れた。水路を目にした瞬間、「わあー、たくさんいる」と子どもたちからは歓声が上がった。この日は120匹ほどを観測したが、7月初めには400匹ほどを確認したという。「梅雨明けが早かったせいか、今年は減り方が早い。それでも7月いっぱいは観察できると思う」と同会の上條慶子さん。
観察をしに来たり、情報を交換したりと交流がある両所。どちらも「ホタルが住める場所作り」を進めてきたのではなく、「ホタルも住めるような自然を復元する」ことを目標にして取り組んでいる。「単に見た目がきれいな公園や、『養殖場』を作るのではない。より自然の状態に近い場所にしていきたい」と同会に携わる信州大学理学部の藤山静雄教授。「子どもも大人も、本当の自然に慣れてもらいたい。そのための『自然教育の場』になるようにしていければ」と話す。