1000年後の世界をテーマにした企画展「3025 美しき消滅世界」が現在、「マツモトアートセンター」(松本市大手1)と市内にある古民家「旧小林邸」(岡田下岡田)で開催されている。
「マツモトアートセンター」1階の小部屋では、ショーケースとなるように参加する11人のアーティストの作品を陳列。2階では、「人口減少がこのまま続けば、日本の人口は0人になるという1000年後の世界」をテーマに制作した、絵画やインスタレーションを展示する。
塩尻市在住のよこやまあやこさんが手がけた「やがて へたどりつく」、1000年さかのぼった1025年、平安時代に書かれた「枕草子」の言葉を題材に選んだ。同書の冒頭を漆で書いたガラスの板を、北門大井戸でくんだ水に浸すようにして置き、地図や写真などと共に並べる。「1000年後、ここは海の底になっているかもしれないとイメージした」と話す。
松本市在住の山本一輝さんは、車輪を描いた絵画を出品。「人類の営みが1000年後も残ってほしい」という思いを込めたという。「souvenir jacket skull」と名付けた薄いグレーのジャケットには、1から3025までの数字を書き入れた。「1つずつ書いていくと、途中から西暦に思えてきて、最後は興奮した」と振り返る。
岩熊力也さんとmicciさんによるアートユニット「4455[zoromes]」は、「旧小林邸」でインスタレーション「人類菌類化研究室」を展開。「他者と結び付き、分かち合い、支え合うことで地球の生命を静かに動かし続けている」存在として菌類に着目し、「絶滅の危機を回避するために、人類を菌類化する」ことに人生を捧げた「ドクター・コバヤシ」という人物の物語を創造した。「マツモトアートセンター」では、その世界観を垣間見ることができるようにコンパクトに紹介する。
主催する「木曽ペインティングス」は、「宿場町と旅人とアートの至福な関係」を掲げ、2017(平成29)年にスタートしたアートプロジェクト。同プロジェクトから派生したアーティストグループ「GR19」が同展を企画した。会期中は関連企画として、狂言や人形を用いた一人劇を上演する「消滅前夜祭」(旧小林邸、13日15時)、ダンスワークショップやギャラリートークを行う「消滅祭」(マツモトアートセンター、14日14時)もある。代表を務める岩熊さんは「1000年後と聞いて『分からない』で終わるのではなく、イメージを膨らませてみることを楽しんでほしい」と話す。
開催時間はいずれも13時~19時(旧小林邸は金曜~日曜のみ)。入場無料。12月14日まで。