信州大学全学横断特別教育プログラム「ライフクリエイター養成コース」によるシンポジウム「文理を超えたAI教育と地域課題解決へのチャレンジ」が10月26日、同大松本キャンパス(松本市旭3)で行われた。
全学部の学生を対象とする同プログラムは、AIについて技術だけではなく、歴史や法律、現状の課題など幅広い角度から学べる3年間のカリキュラムを構築。アイデアソンやビジネスコンテストなど実践的な場も用意することで、自分の人生を主体的にデザインし、他者と協働しながら新しい価値を想像できる「ライフクリエイター」の育成を目指す。
文部科学省が推進する「知識集約型社会を支える人材育成事業」の助成を受け、2021年度に始まり、本年度は1年次~3年次、合わせて約60人の学生が履修している。運営する同大社会基盤研究所(軽井沢町)の所長で同大経法学部教授の丸橋昌太郎さんは「実社会に出て求められるのは、専門的な知識だけではない。互いの専門を理解し、文理融合して実践形式で学べる場を設けることで、次の社会の仕組みをつくるライフクリエイターを輩出したい」と話す。
当日は、同研究所特任教授の林憲一さんが同コースのカリキュラムについて紹介。AIは学際領域だとし、文理の枠を超えて、AIスキルを持ったライフクリエイター人材の必要性を説明した。
シンポジウムでは、3人の学生が成果発表を行った。経法学部3年・佐野禎治さんと同・石井恵里さんは、「ライフクリエイター奨学金」を受給して米シリコンバレーを視察。佐野さんは、視察先の企業の様子を「プロジェクトが『ボス』という姿勢で、社員の皆さんは仕事を夢中になって楽しんでいた」と振り返った。法律を学んでいる石井さんはAIへの興味から同コースを受講したといい、「AIの仕組みや技術を知ることが強みになる。法的、倫理的な側面を支援することで、新しい技術の導入を進めたい」と意気込んだ。
人文学部3年の庵下結未さんは、自身の研究分野である舞踊学・身体論と比較し、「普段は『本当にそうなのか』を追求しているので、まず実践という全く異なる視点を得られた。生身の体が持つ社会性について考えるきっかけになった」と話した。
シンポジウムは成果発表とプログラムの周知として企画した。丸橋さんは「学生が楽しみながら取り組んでいる様子が伝わってきた。これから先、どんな分野でも不可欠なAIについて、振り回されるのではなく活用できることを多くの学生に学んでもらいたい」と力を込める。