観念アートの先駆者の一人、芸術家・松澤宥(ゆたか)さん(1922-2006)の企画展「私の死 松澤宥」が現在、芸大・美大受験予備校「マツモトアートセンター」(松本市大手1、TEL 0263-33-5511)内のギャラリーで開催されている。
代表的なコンセプチュアルアート(概念芸術)作品「私の死(時間の中にのみ存在する絵画)」(1970)を、同校代表の北澤一伯さんが当時のデータを参考にして再解釈を試みる。以前、歯科医院だったビル2階のフロアを改修し、展示空間を設けた。通りに面した1階のギャラリーにも同作品を、3階には蔵書「眼球譚(たん)/月球譚」などを展示する。
松澤さんは1964(昭和39)年に「夢の中で『オブジェを消せ』という啓示を受けた」といい、以降、言語や意味など非物質を媒体として表現活動を行うようになった。北澤さんは高校時代に名前を知り、20歳の時に松澤さんの作品を実際に見て衝撃を受けたという。「松澤さんの中では作品とは物体ではなく気持ち、概念なのだと思う」と話す。
松澤さんは下諏訪町出身。今年は生誕100年に当たり、県内では長野県立美術館(長野市)で大規模回顧展「生誕100年 松澤宥」、下諏訪町では町立諏訪湖博物館・赤彦記念館など11の会場で「松澤宥 生誕100年祭」が開催されている。
同ギャラリーで松澤さんの展示をするのは4回目。北澤さんは「生涯にわたる試行に触れるためには、膨大な資料を基にさらに研究が必要」と考え、長期展望の一環と位置付けて定期的に開催している。同展は、ちょうど生誕100年に当たる2022年2月2日に開始。松澤さんがこだわっていたという「2」に掛けて、2階をメイン会場にしたという。
最終日の3月21日には、松澤さんにゆかりのある人を招いてトークイベント「アートカフェvol.123 『三 二 一 消滅』」を開く。アートカフェは月1回ペースで約10年開催しているイベントで、「123回目を3月21日に開くという数字の並びにも何かを感じる」と北澤さん。「見えないものを感じさせるのが美術。美術とは何かということを問い掛ける空間でもあるので、体感してもらえれば」とも。
営業時間は14時~18時。3月21日まで。