松本・北深志のグルテンフリーの焼き菓子を扱う「そればな」(松本市北深志1)と印刷会社「藤原印刷」(新橋)が、余った菓子と紙を「物々交換」する取り組みを始めた。
そればなで賞味期限切れが近く、余ってしまう商品が出たときに藤原印刷に連絡。同社の営業担当が立ち寄るか、難しいときは同店が配達し、印刷物に使う際に切り落とすなどした紙と交換する。同社までは車で10分程度の距離。店主の三宅利佳さんは「余りが出るかどうかは日によって違う。臨機応変に対応できるのは、ご近所だからこそ」と話す。
紙は、通販の際に箱に入れる緩衝材やメッセージカードとして使う。これまでは新聞紙や手元にある紙を利用していたが、「ネット通販を始めたこともあり、今あるものでは足りないが、緩衝材のために新しく紙を買うのもちょっと抵抗があった」と三宅さん。客として店を訪れた同社専務取締役の藤原隆充さんに相談したところ、「物々交換」を提案されたという。「以前から余った商品は身近な人にあげていたので、『捨てない方法』が増えるのも良いと思った」と振り返る。
同社では福利厚生の一環として、残業する社員にパンなどを「残業食」として支給しており、同店から連絡があったときに、差し替える形で対応している。藤原さんは「ときどき『そればな』のお菓子を配れば、バリエーションが増えて社員も喜ぶし、店のPRにもつながる」と話す。同社でも余った紙は、名刺やラベルなどに活用するなど「捨てない方法」を模索している。「金銭ではなく、等価で交換することで、循環する取り組みができればいいと考えていたときだったので、ぴったりだと思った」とも。取り組みの背景や意図を社内で共有することで、不定期かつその都度で配る数が異なることも、社員に理解してもらっているという。
現在は、週1回のペースで「物々交換」を行っている。「東京にある営業所に送る定期便に入れることもある。何のために始めたのかを忘れないように工夫しながら、継続していきたい」と藤原さん。三宅さんは「顔が見える距離だからこそできることがあると感じた。これを一例に、ほかの企業やお店にも広がっていけば」と笑顔を見せる。