NPO法人「コミュニティシネマ松本CINEMAセレクト」が30周年を迎えた。
1989年2月、「中劇シネサロン」(2004年閉館)で、ダニエル・シュミット監督の「デ・ジャ・ヴュ」を同NPOの宮崎善文理事長が初めて「松本CINEMAセレクト」名義で上映した。その後、市内の映画館やホールなどで、過去の名作やシネコンでは上映されないような「発掘作品」を中心に月5~10本のペースで紹介。映画の作り手と観客をつなぐことを意識し、監督や出演者をゲストに招いて話を聞く機会も数多く設ける。
2月9日には、30周年記念上映として「覆面上映会」を開催。場内が暗くなってスクリーンに映し出されるまで上映作品は秘密という、宮崎さんが1人で運営していた頃に好評だった企画を復活させる。「今は、映画を見るときにもネットなどで情報を仕入れて、『面白い』を確認するために鑑賞する人が多い」と宮崎さん。「未知なるものに、時間と価値を投資する人がどのくらいいるかは分からないが、まったく接点のない映画が一生の一本になる可能性も秘めている」と話す。当日は、入場の際にスタッフとじゃんけんして、勝てば1年間有効の招待券を進呈する。
11日には、松本CINEMAセレクトアワード2018「3人3色賞」を受賞した山中瑶子監督の作品「あみこ」を上映する。山中監督は1997年生まれ、長野市出身。同作は日本大学芸術学部を休学中に脚本を書き始め、スタッフやキャストもほぼ友人を集めて製作した。宮崎さんは「本当にたくさん映画を見ている若手監督。県内からこんなに作家性のある人が出てくるとは」と期待を寄せる。合わせて、山中監督が大好きだというハル・ハートリー監督の代表作「シンプルメン」の上映や、山中監督と主演の春原愛良さんによるアフタートークも行う。
17日には、「MAKI マキ」と「山(モンテ)」を上映。「山」を手掛けたイランのアミール・ナデリ監督が来場する。「昨年、映画祭で会ったときに松本に来てほしいとお願いした。日本が大好きなナデリ監督に、直接話を聞けるのは貴重な機会」
30年の間に、「テアトル銀映」「上土シネマ」「エンギザ」など中心市街地の映画館は次々閉館し、シネコンが誕生。テレビやレンタル店を利用して映画を楽しむ時代から、スマホなどでより手軽に視聴できる時代へ変化する中、同NPOは映画館で見ることにこだわり、映画環境の充実と共に、映画上映者の育成を目指す。宮崎さんは「これからも、多種多様性を第一に、シネマセレクトならではの作品、ゲストを迎えたい」と話す。
いずれも上映はまつもと市民芸術館(松本市深志3)で行う。上映時間や料金はホームページで確認できる。