松本市のギャラリーカフェ「Gargas(ガルガ)」(松本市深志3、TEL 0263-39-5556)で現在、画家・野村剛さんの個展「山」が開催されている。
落ち葉や木、山や森をイメージした立体・平面作品、約50点を展示する。作品は主に昨秋、同ギャラリーオーナーの熊谷俊行さん・幸枝さん夫妻と八ヶ岳の硫黄岳を登ったときに見たものや撮影した写真がベースになっている。「ここ数年、2人から山の良さを聞いていた。漠然と『いいかもしれない』から、道具をそろえ始めると、どんどんその気になってきた」と野村さん。慣らすように里山から登り始めると、より引き付けられていったという。
8色の色粘土を用いた絵画を数多く手掛ける野村さんだが、同展では茶やグレー、白など単色が中心。黒で表現した作品も並ぶ。「当初、これまでの作品を振り返るような展示を考えていたが、『このままでいいのか』という思いが自分の中のどこかにあった」と野村さん。山をテーマに決め、制作を始めてからは「2カ月間、戦いだった。浮き沈みも激しく、焦りしかなかった」と振り返る。「駄目だと思ったところから生まれてくるものもある。『崖っぷちのような雰囲気が出てしまうのもいい』『こういう野村もありだ』と自分自身に言い聞かせるようにしてきた」とも。
色粘土を用いた絵画は、写真を見ながら実物に近づくように描いていくが、今回の作品は、撮影した写真を見た後に時間を置き、自分の中でイメージを再構築するようにして作り上げていったという。「いつもとは全く違う方法だったが、続けるうちに面白さも感じるようになってきた」
山の楽しさ、厳しさなどいろいろなものを一つにまとめたいと取り組んだ「山のレリーフ」は黒一色の作品。DMに使った「帽子と雷鳥」と共に展示する。オブジェを入れたガラスケースは、茅野市でガラス作品を手掛ける石田冲(のぼる)さんに依頼した。「協力してくれる人がいるから、新しいことに挑むことができた。作品に向かうときは1人だけど、1人じゃなかったから頑張れた」と野村さん。「山には到底人間がつくり出すことのできない世界がある。その素晴らしい世界に少しでも近づけるようにと思いを込めた作品。これまでとは違う印象かもしれないが、見てもらえれば」と呼び掛ける。
作品は全て販売する。オブジェ=1,000円~、「山のレリーフ」=3万円など。営業時間は11時~20時。火曜と第1・第3・第5月曜定休。10月29日まで。