松本市庄内の大型ショッピングセンター「コモ庄内」(松本市出川1)の北東側にある「多自然水路」に6月下旬からヘイケボタルが出現し始め、近くの小学生らが観察に集まっている。
昨年度末まで5年にわたり市が整備を行っていた水路は現在、住民有志による「庄内ほたると水辺の会」が手入れを行っている。6月21日から出始めたホタルの数や観察に来た人の数を記録。「今年は例年よりも早く出始めた。数も多く、どうやら『当たり年』のよう」と同会代表の上條慶子さん。
昔は周辺一帯に田園風景が広がり、夏になれば川にはゲンジボタル、田にはヘイケボタルが飛んでいたという。しかし、年々数は減り、区画整理工事により水路なども埋められることになっていたが、「家の裏手が最後にヘイケボタルの残っていた(農業用)水路で…何とか残せないかと思い」(上條さん)活動を始めた。2003年夏、信州大学理学部の藤山教授のもとで現地調査が行われ、秋には70メートルほどの水路を移転することに。底の泥は手作業、土手の土は重機で取り、植生ごと現在の場所に移した。その後、市と住民がワークショップなどを重ねて、整備内容や維持管理方法を検討してきた。
同会は「地元で長く愛される場所に、訪れた人の癒しの場に、地元の子どもたちを中心とした、生き物教育の場に」という方針で活動している。「ホタルを残すことは、ホタルの住める環境を残すということ。逆に考えれば『ホタルが(日本古来の)環境を守ってくれる』とも言える。虫嫌いの子が虫に興味を持ったり、みんなで力を合わせて作業したり…ホタルがきっかけで『地域の人の輪』ができつつある」と上條さん。
今年オープンしたショッピングセンター「コモ庄内」を管理しているアップルランド(今井)には事前に願い出て、ホタル成虫期(6月末~7月末)には水路南側の街灯を消灯してもらうなど協力を得ている。「市や庄内土地区画整理事業組合、工事業者の皆さん、専門家の方々、地域の学校、ショッピングセンター、そして住民の方々…多くの人の協力があってこそ、(ホタルが生息できる)この場所を保存・維持できていける」(上條さん)。
取材当日は近くの筑摩小学校の児童が保護者とともに観察に訪れ、「服にくっついてる」「早く光るのがオスだよ」と声をひそめて話しながら、ホタルの光に見入っていた。
水路の入口には「みんなの水辺を皆で大切に」とマナーについて書かれた看板が立てられている。たくさんの人に見て欲しい気持ちと、守っていかなければならないという気持ちがある。「街中でもこんなところがあるということを知ってほしい。そして、ここを守るために多くの人が努力していることも」と上條さんは話す。
ホタルが最も光りやすい時間は20時過ぎごろ。観察できる期間は7月末まで。水路の位置・観察者の注意事項は「コモ庄内」のアップルランド・綿半の入口掲示板のポスターで確認できる。
「海のホタル」と「山のホタル」を同時に観察できる場所―志摩で発見(伊勢志摩経済新聞)「ゲンジボタル」を自然繁殖-大地沢青少年センターが環境整備(町田経済新聞)今年も都心の神社境内に「ホタル」の姿-限定「ほたる守り」も(市ヶ谷経済新聞)