浅間温泉の「手仕事扱い処(どころ)GALLERYゆこもり」(松本市浅間温泉3、TEL 0263-46-2066)で現在、デザイナーでアーティストの高北幸矢さんの展示「落花、湯籠(ゆこも)り」が開催されている。
高北さんは三重県生まれ。1977(昭和52)年に高北デザイン研究所を設立し、グラフィックデザイン、都市景観、まちづくりプロジェクトなど幅広く手掛け、名古屋造形芸術大学(現名古屋造形大学)学長(2006~2011)、清州市はるひ美術館館長(2012~)を務めるなど、多岐にわたって活躍している。
インスタレーションでは、和室に無数の「椿(つばき)」がちりばめられている。「落花という花にとっての終わりの時も美しい姿のまま。他にはない花だと思う」と高北さん。「記憶を呼び起こさせる花でもある」と話し、過去の展示でも、長い時間見つめて思いをはせる人も多く見られたという。
「椿」は一つ一つ手作業で、バルサ材をのみとナイフで削って作成し、着色している。「既製品の造花では駄目。手で作ることで、一つ一つが異なる表情になる」と高北さん。板の状態から、切って削り、接着して花の形にし、着色するまでの過程が分かるようにパーツを並べ、高北さんが在廊中は実演も行う。
同ギャラリーの瀧沢一以さんが、2012年に古川美術館(名古屋市)の分館・爲三郎記念館で行われたインスタレーション「落花の夢」に足を運んだことが、開催のきっかけになった。「数寄屋造りの母屋と日本庭園にちりばめられた『椿』が、本当に印象深かった」と瀧沢さん。「和の雰囲気も生かしつつ、より野趣を感じる空間ができるかもしれない」と依頼し、同展が実現した。
「椿」を描いた版画や水彩画、皿やマグカップなどの陶器も展示。ギャラリーに通じる庭にも「椿」が点在している。「室内、庭、そして絵や器など、それぞれ表情があると思う。じっくり見て、感じてもらえれば」と瀧沢さん。
作品は一部販売する。価格は、皿=1,500円、カップ=2,000円、絵画=1万円~など。営業時間は10時~18時。木曜・金曜定休(8月12日~16日は休み)。入場無料。8月30日まで。8日~10日、22日~24日、30日は高北さんが在廊を予定する。