松本・今町のコワーキングスペース「Knower(s)(ノウアーズ)」(松本市大手1)で5月31日・6月1日、「藤原印刷博」が行われた。
藤原印刷(新橋)は1955(昭和30)年、1台のタイプライターでスタートした印刷会社。心を込めて刷る「心刷」をモットーに、印刷全般をはじめ企画制作やデザイン、編集など幅広く手掛ける。同イベントでは書籍、雑誌、ショップカードなどさまざまなものを展示。本になる前の状態の紙なども用意し、同社でどのような印刷を行っているかを紹介した。
1日には、同社経営企画室の藤原隆充さんと、営業部の章次さんによる「藤原兄弟トーク」が行われた。松本市の美容室「sLeep」のショップカードは、ロゴの羊を生かしたモコモコした質感が特徴。「この手触りの紙があるということを知り、試行錯誤しながらクライアントと共に作り上げた」と隆充さん。雑誌「NORAH」は本文に4種類、表紙に3種類の用紙を使用。用紙を入れ替えたり、表紙を裏表に印刷したりすることで、同じ内容で合計12パターンの雑誌が出来上がった。「用紙が増えると時間も手間もかかるが、おそらく日本で初の試み。そんな雑誌に携われたことがうれしい」と章次さん。
先日開催された「クラフトフェアまつもと」の30周年記念本「ウォーキング・ウィズ・クラフト」は、背表紙に製本テープを張り、一冊一冊、本のタイトルを押印。「社員食堂で、社員十数人が手分けして押した(笑)」というエピソードも披露した。
同スペースのスタッフ・柚木真さんが2月に同社の工場見学に行き、「印刷に対する思い、攻めの姿勢に心を打たれてファンになった。皆さんにも藤原印刷を知ってもらいたい」と企画。5月上旬に、隆充さんに企画を提案すると「終わった瞬間に即答で(笑)」快諾されたという。「柚木さんの気持ちがうれしかった。こういう場を作ってくれたことがありがたい」と隆充さん。
本来は出版印刷がメーンだが、地元にゆかりのあるもの、印刷のこだわりを感じられるものを中心に紹介。「足を運んでくれる人は、『藤原印刷』に何か興味を持ってくれている。その期待に応えられるものを選んだ」と隆充さん。「近年はウェブ上で入稿できる『安くて早い』ものも多いが、私たちは真逆の道を進んでいる。クライアントに体験・体感してもらう『エンターテインメント』こそ、私たちが目指す『印刷』」と話す。
同スペースで、地元の企業がイベントを行うのは初めての取り組み。「松本にも面白い会社はたくさんある。地元企業の魅力を伝える場を作りたい」と柚木さん。「今後も継続的にこのような企画ができれば。『われこそは!』という会社はぜひ」とも。