松本・千歳橋に登場したステンレス製の巨大なオブジェ3体が、道行く人たちの注目を集めている。
制作したのは、安曇野市のステンレス彫刻家・中嶋大道さん(67)。彫刻は、立ち上がった姿のカブトムシが、尾を上げたサソリとキノコ雲の2体とが向かい合って配置されている。カブトムシは高さ約4メートル、重さ約1.5トンという巨大さ。「今まで作った中でもかなり大きい。高さがあるので、頭部と胴体をはめこみ式で作り、現場で組み立てた」と中嶋さん。
カブトムシは2009年夏ごろから制作していた作品。今年3月に東日本大地震、6月末には松本でも最大震度5強を観測した地震が起きたことから「一生懸命作って日本を励ましたい」という気持ちが加わり、「日本の元気・立ち上がれ日本」をテーマに掲げ、立ち上がった姿のものを制作した。「カブトムシは、戦国武将たちが『勝虫』としてたたえ、武具や甲冑(かっちゅう)などに装飾として身に着けていたという。対するサソリとキノコ雲は『災いの象徴』として、対峙(たいじ)するかたちで配置した」と話す。「東北でも栄村でも、お世話になった人が被災している。その人たちの顔が浮かんで…。気持ちを形で表したかった」
頭の向きや前足と後ろ足のバランス、頭部と胴体のはめこみ部分など、苦労した点は多いという。「手の部分は、元気な雰囲気を出したくて、本来の形と少し変えて表現した。元気だけど優しく、圧迫感を与えないように気を付けた」
展示を始めた9月28日からほぼ毎日足を運んでいるという中嶋さん。周辺の町会からも好評で、12日までだった展示期間を11月3日ごろまで延長することが決まったという。「福島から避難してきている人に『美術で支援してくれるのはうれしい』と声を掛けてもらったり、サソリやキノコ雲も『横浜で見た』とか『日展で見た』と言ってもらったりした。それがうれしくてつい毎日来ちゃうんだよね」とほほ笑む。
「昆虫が好きで30年近く昆虫のオブジェを制作しているが、これからも作り続けていく。かっこいいしね」と中嶋さん。「みんな『GET UP JAPAN』の気持ちを持って、元気になってもらえれば」とも。
展示は11月3日ごろまで。