松本の瑞松寺(ずいしょうじ)近くにある空き家で5月3日から、インスタレーション「現在民藝館 丸山邸」が行われる。
コーヒーのある風景をつくるカフェユニット「L PACK」の小田切奨さんと中嶋哲矢さんが企画。2人は2009年から「工芸の五月」で池上邸の蔵を使い「池上喫水社」を展開してきたが、「民芸、工芸をあらためて考えてみたい」と今回は別の場所を探し、空き家だった古い平屋を拠点に据えた。畳敷きの2間にさまざまな物を並べ、庭のわき水でコーヒーを入れる。「民芸や工芸は、品物ではなく、そのものがまとっている考え方や捉え方だと思う」と小田切さん。「『池上喫水社』とベースは同じ。2人の土台のようなものが出来上がった感じがする」と中嶋さんは話す。
2人は2007年から活動を開始。決まった場所を持たずに、移動しながらコーヒーをいれる「行商系」が原点だという。今年3月までは、一時的な拠点「L CAMP」を横浜市内に構え、昭和20年代に建てられた古い旅館を再生したイベント・ギャラリースペース「竜宮美術旅館」でカフェスペースを展開していた。
「もともと建築を学んでいたこともあり、使われなくなった建物に興味がある」と小田切さん。連休中に松本入りし、数日のうちに昨年あった古い建物が3軒もなくなっていることに気付いた。「今、使われていない場所にも『こんな使い方があるよ』という提案になれば。まあ、自分が使いたいだけですが(笑)」
「世界を変える最少構造を知るための方法は日常の中にある」と中嶋さん。震災後、特に個人がどう考え、どう生きるかが重要になってきているという。「特別なものではない日用品をきっかけにして、それがわかるようになってくると思う。そんな場所になればうれしい」
5月3日~6日は、野外に地元工芸作家のスツールをしつらえ、コーヒーのある風景をつくり出す「徘徊(はいかい)珈琲」も緑町・辰巳公園で開催する。「僕らが何かを用意してサービスするわけではないが、場所とコーヒーを渡すので、あとは皆さんが好きなように感じてもらえれば」(小田切さん)。
「現在民藝館 丸山邸」は13時~18時。入館料(コーヒー付き)500円が必要。問い合わせや定休日はブログで確認できる。今月27日まで。「徘徊珈琲」は10時~17時。参加費(説明書付き)500円。