県内各地の祭りや芸能の現状、継続に向けた活動について話し合うシンポジウム「これからの伝統文化継承と地域コミュニティ」が1月25日、松本市立博物館(松本市大手3)で行われた。主催は長野県と信州アーツカウンシル。
講演では、国学院大学専任講師で飯田市美術博物館の元学芸員・櫻井弘人さんが登壇。南信州地域の状況を解説しながら、「新たな担い手の確保のためには、民俗芸能の魅力や楽しさを知ってもらい、価値を発信していくことが大事」と呼びかけた。
事例紹介では、市内両島で行われている伝統行事「お八日念仏と足半(あしなか)」について、保存会の井口幸信会長が、継承についての考え方や取り組みを説明。「本質部分は変えない。ただ、時代や環境に合わせて変化は必要だし、そうしないと継承はできない」とし、地区の住民に保存会への復帰を依頼したり、役割分担や連絡方法を見直したり、練習や準備の機会を設けたりなど、変えてきたことを紹介した。
グループディスカッションでは、当日参加した60人ほどが7つのグループに分かれて意見交換を行った。参加者は、地域の伝統行事に携わっている人をはじめ、大学で伝統文化について調査研究をしたという人や、移住して興味を抱いたという人などさまざま。「文化財に指定されているわけではないが、残していきたい行事がある」、「祭りに対して情熱を持っている人と、やらされていると思っている人がいて、後者が増えていくと厳しい」という声のほか、「祭りに必要な道具を貸し借りできる仕組みがあれば」というアイデアも上がった。
最後は、県内博物館の学芸員が登壇して座談会を開いた。飯田市美術博物館の近藤大知さんは、同館で祭りの展示に興味を持った外国人が、実際に現場まで足を運んで手伝いもしてくれたという事例を紹介。松本市立博物館の武井成実さんは、地域の伝統行事について問い合わせがあることに触れ、「博物館には、相談窓口としての機能がある」とした。長野市立博物館の樋口明里さんは「博物館は『物』だけではなく、『こと』をどう残すかも重要」と話した。
県は、地域コミュニティーの維持・存続にとっても祭りや芸能が持つ意味は大きいと捉え、各地の現状や事例を共有しながら、今後について考える場を設けている。県県民文化部文化振興課の小椋大輔さんは「地域の伝統文化は、地域コミュニティーの重要な核になっている。さまざまな事例を知ることで、負担を減らしながら続けていく方法を皆で考えていきたい」と話す。