特別展「春を待つ涅槃(ねはん)図」が現在、松本市立博物館(松本市大手3、TEL 0263-32-0133)で開催されている。
涅槃図は、お釈迦(しゃか)様が亡くなった時の様子を描いたもの。命日である2月15日や月遅れの3月15日前後に行われる法要・涅槃会で掲げられてきた。同展では、市内の寺院などに伝わる17点を中心に、善光寺大勧進の涅槃像や、開善寺(飯田市)の重要文化財「八相涅槃図」など、約30点を紹介する。
西善寺(松本市和田)の涅槃図は、縦4.4メートル、横5.1メートル。もとは、イオンモール松本の西側にある念来寺の什物(じゅうもつ)だったが、廃仏毀釈(きしゃく)の中で信徒たちによって移された。一般的に涅槃図は満月が描かれており、太陽と月が並ぶ「日月二星」の構図は珍しいという。同様の構図が新たに確認された広沢寺(里山辺)と大庭町会(島立)に伝わる涅槃図も合わせて展示する。
涅槃の舞台と主な登場人物を説明するパネルも用意。お釈迦様の弟子や、韋駄天(いだてん)や帝釈天(たいしゃくてん)、阿修羅(あしゅら)をはじめ、死を悲しんで集まったさまざまな生き物も紹介している。ほかに、岩絵の具や絵絹、紙など日本画の画材を並べたコーナーや、涅槃会で供える「やしょうま」などを解説するコーナーも設ける。
2018(平成30)年に策定した松本市歴史文化基本構想で、市民の調査により抽出された1万1632件に上る文化財リストを手がかりにして同館が調査。地域で大切に保管されている涅槃図や特色ある習わしについて、多くの人に知ってもらいたいと企画した。学芸員の前田利恵さんは「手がける絵師の個性や、細かく丁寧な筆使い、歴史や思いなど知れば知るほど魅力が増す。身近にある文化財に触れる機会になれば」と話す。
開館時間は9時~17時(入場は16時30分まで)。入場料は、大人=1,000円、大学生=700円、高校生以下無料。火曜休館(祝日の場合は翌日)。3月3日まで。期間中は、「涅槃図の絵解き」(15日)、学芸員によるギャラリートーク(8日、22日)など関連企画も行う。