3月に閉店した松本駅近くの洋食店「民芸レストラン盛よし」(松本市深志2、TEL 0263-75-7042)が8月18日、再オープンした。
地域活性化事業を手がける「オニオン新聞社」(千葉市)が経営を引き継いだ。松本民芸家具の椅子やテーブル、ステンドグラスのランプシェードなど内装はそのままで、メニューも以前と変えず提供。「カニコロッケ定食」(1,100円)、「特製ハンバーグ定食」(1,210円)など20種類以上の定食をはじめ、ステーキ、カレー、グラタンなどもある。同社社員で店長を務める浅川和也さんは「長年、厨房(ちゅうぼう)に立ち続けてきた2人が再び腕を振るってくれる。変わらない味を届けたい」と話す。
同店は1979(昭和54)年4月に開業。創業者の須澤盛義さんが、民芸品が好きだったことと「お腹いっぱい食べられるように盛りを良くする」という思いを込めて店名を付けたという。昨夏、盛義さんが店に立つことが難しくなってからは、長女の忍さんが中心となって営業していたが、3月に体調を崩して入院。いったん閉店することにした。
閉店前の3日間、「感謝弁当」を販売すると多くの人が買い求め、多い時には400人が集まったという。調理師学校に通いながら店を手伝っていた忍さんの長男・洸一郎さんは「母が元気になったら復活するつもりだった」と話す。しかし4月、忍さんは46歳で亡くなった。洸一郎さんは、松本第一高校食物科に通う弟・広人さんと共にいずれは店を切り盛りしようと考えていたが、「目標を完全に失ってしまった」と振り返る。
貸店舗となっている情報を知った浅川さんが、社内で事業継承を打診。同社で長野の地酒を扱うECサイトを立ち上げる準備をしており、会社のPRも兼ねて実店舗を探していたタイミングだったという。「私も高校時代から通っていた店。内見に来て、新たな店を始めるよりも、『盛よし』を復活させる方がいいと考えた」と浅川さん。6月には盛義さんに企画書を渡した。
洸一郎さんは、企画書を見て驚いたという。「以前、母が店をやるなら『オニオン』という名前にしたいと言っていた。これは運命だと思った」。店名を「民芸レストラン盛よし by onion」とあらため、当初は秋ごろの再開を予定していたが、復活のうわさが広まったため、急いで準備を進めてきた。7月下旬に始めたクラウドファンディングでは、目標の10倍以上となる約350万円の支援が集まり、8月2日~6日のプレオープンにも多くの人が訪れた。
3月に閉店した際、「いつかのときのために」という助言もあり、看板なども残していたという。「本当に、いろいろな人の支えがあって復活できた」と洸一郎さん。自身も高校生の頃から店に立ち、「自分の中でこうしたい、という思いもあったので、新しいことにも少しずつ挑戦していければ」と意気込む。浅川さんは「味はもちろん、店の雰囲気やスタッフも含め、地域の皆さんにとって大切な場所。いずれは須澤兄弟にバトンを渡したい」と笑顔を見せる。
営業時間は、11時30分~15時、17時30分~21時30分。火曜定休。