松本・筑摩の「ギャラリー石榴(せきりゅう)」(松本市筑摩2、TEL 0263-27-5396)で現在、「福井良之助 孔版画展」が開催されている。
福井良之助(1923~1986)は東京都生まれの洋画家・版画家。30代半ばから約10年間、謄写版(とうしゃばん、通称・ガリ版)を使った版画制作に打ち込み、渋い色合いの中に控え目な美しさを感じる孔版画を生み出した。もともと5~15部という少ない刷り部数しかない上、発表当時にアメリカのコレクターに高く評価されて国外に渡ったという経緯もあり、貴重な作品となっている。
同展では、孔版画を中心に、ドローイングや油彩など20点余りを展示する。野菜や花、魚や鳥などを描いたもののほか、抽象画も。くすんだ色合いの背景に描かれた身近なモチーフが、土の中に溶け込んでいくかのような作品が並ぶ。「ガリ版で作られたものだが、じっくり見るとモダンな雰囲気も合わせ持っている」と同ギャラリーの薄井みゆきさん。「『物の形骸化』を描きたいと語った福井の死生観を感じられる作品が多い」と話す。
同ギャラリーでの展示は4回目。展示会のたびに、変化や新たな発見も感じるという。「孔版画とそれ以外の作品には通じるところがある。繊細さの中にパワーもある作品。ぜひご覧いただければ」
価格は4万円~。開館時間は10時~18時。6月28日まで。