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松本で「串田和美総監督と最後にみんなで話しあう会」 町と劇場、思い託す

参加者と対話する串田さん

参加者と対話する串田さん

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 3月末で退任するまつもと市民芸術館(松本市深志3)総監督の串田和美さんが市民と話すイベント「串田和美総監督と最後にみんなで話しあう会」が3月30日、同館で行われた。

スタンディングオベーションに応える串田さん

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 串田さんは、同館が開館する前年の2003(平成15)年、芸術監督に就任。当時は同館建設反対の市民運動が起こり、建設の一時中止を求める請願書には約6万3000人の署名が集まった。事前に知らされていなかった串田さんは驚いたというが、「関心の高さ」をエネルギーにして精力的に活動。開館の2カ月前に「まつもと市民芸術館の歩むべき道」と題した対話集会を開くなど、市民の声に耳を傾けてきた。

 当日は、主ホールのステージ上に客席を設け、約180人が壇上を囲むように座った。前半は市民運動の代表で、対話集会でも登壇した西村忠彦さんと共に、これまでのことを振り返りながら語り合った。こけら落とし公演「スカパン」をはじめ、数多くの作品を見てきたという西村さんは、「最初は『とんでもないところに来てしまった』と思っただろうに、逆風の中で真骨頂を発揮していただいた」と話し、退任を取り上げる地元紙などを紹介。串田さんは、町の人々とのエピソードに触れつつ、「東京ではなく松本で見たいと足を運んでくれる人がいるのは、作品ではなく町の空気の力。松本は、市外の人からうらやましいと思われている『憧れの町』なので、期待されていることを感じて、それに応えていってほしい」と笑顔を見せた。

 後半は、参加者と対話の時間。演劇部の顧問を務める高校教諭は「お世話にならなかった部員はいない。未来の文化の担い手を育ててくれたことも串田さんの大きな功績の一つ」、建設時に近くで勤めていたという女性は「仕事、結婚、出産と変化があった20年、その時々で人生を豊かにしてもらった」と感謝を伝えた。「松本を『第二の故郷』として、これからも用事を見つけて来てほしいし、関わってほしい」という声には、会場から大きな拍手が起こった。

 後任が決まっていないことが心残りという串田さん。「まだまだ課題はあるし、もっと良くしていけると思う。次の人が来たときに、皆さんが意見や思いを寄せてくれれば」と呼びかけた。最後は音楽と拍手に送られて、客席を歩いて退場。スタンディングオベーションに応え、客席から大きく手を振った。

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