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松本市美術館で「太田南海展」 地元文化支えた彫刻家、街なかの作品も

「宿命」(写真左)と「雪ぞら」

「宿命」(写真左)と「雪ぞら」

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 松本市出身の彫刻家・太田南海さんの生誕130年記念展「太田南海展」が現在、松本市美術館(松本市中央4、TEL 0263-39-7400)で開催されている。

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 南海は1888(明治21)年、松本・中町に人形師の長男として生まれた。17歳で木彫家・米原雲海に入門し、長野市の善光寺仁王像制作にも携わった。独立後は拠点を松本に移し、仏像や肖像、祭り舞台など、地域の人々からの依頼で数々の作品を手掛けた。

 木彫を中心に、陶彫、日本画など合わせて71点を展示。プロローグでは、彫刻家としての足跡をたどれるように、師である雲海の「竹取翁」と南海の「竹取翁」を並べ、制作の際に使っていた道具や、舞台の基本設計図なども紹介する。

 文展や帝展などへの出品を続けた南海。「過去」「現在」「未来」を表した3人の女性が寄り添う「宿命」は第15回帝展に出品した作品で、キリスト教の聖母と仏教の観音像を融合したような、柔らかで穏やかな美しさを帯びている。絶作となったのは、20代前半に日本画を学んだ美術史家・岡倉天心の像。学芸員の稲村純子さんは「『見えないものまで表現する』という天心の教えは、ずっと南海の心にあった。自身、最後の作品になることをどこかで感じていたのかもしれない」と話す。

 「樋口壽八郎先生胸像」(松本市立開智小学校)や「空穂先生像」(窪田空穂記念館)、老舗菓子店「開運堂」の掛け紙や割烹(かっぽう)「松本館」の建物意匠など、松本の街に息づく作品を数多く残しているのも特徴。「街の中にあるもの、ずっと残っているものも多く、地域の人たちに依頼され、それに応じてきたことが分かる。今回は個人蔵の作品も多い」と稲村さん。会期中は、関連プログラムとして、探訪ツアーなど街なか企画や、会話を楽しみながら鑑賞する日も設ける。「太田南海という彫刻家が地元にいたということを多くの人が知る機会になれば」と話し、来場を呼び掛ける。

 開館時間は9時~17時。入場料は、大人=1,000円、大学高校生・70歳以上の松本市民=600円。月曜休館(祝日の場合は翌日)。11月25日まで。探訪ツアーは10月28日に「松本館コース」。11月3日に「舞台コース」を、11月23日~25日は「トークフリーデー」を行う。

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